人材不足の企業によくある課題
人材不足の問題は、少子高齢化や労働市場の流動化といった外部要因だけでなく、企業内部にも重要な課題が潜んでいます。効果的な対策を講じるためには、まず自社の課題を正確に把握することが重要です。
まずは、人材不足に悩む企業によく見られる主な課題を解説します。
業務量が多い・DX化が遅れている
過度な業務量や長時間労働は人材の定着を妨げる大きな要因となっています。
特に近年は、過重労働に対する求職者の目が厳しくなっており、残業時間の多さは企業の採用活動にマイナスの影響を与えています。
この問題の背景には、デジタルトランスフォーメーション（DX）の遅れが関係していることが少なくありません。
業務の自動化やデジタルツールの活用が進んでいない企業では、必要以上の人手や時間が業務に費やされている可能性があります。
給与水準が低い
業界や職種の給与相場と比較して、自社の給与水準が見劣りする場合、優秀な人材の確保は困難になります。
特に、専門性の高い職種や経験者の採用において、この問題は顕著に表れます。
改善策としては、基本給の見直しだけでなく、各種手当の充実や新たな福利厚生制度の導入なども検討する必要があります。競合他社の待遇を分析し、自社に不足している要素を見極めることが重要です。
柔軟な働き方ができない
現代の労働市場では、柔軟な働き方の実現が重要な課題となっています。
時間外勤務が常態化していたり、休暇取得が困難だったりする企業では、人材の確保・定着が難しくなっています。
また、正社員と非正規社員の待遇格差が大きい場合も、職場の活力低下や人材確保の障害となります。同一労働同一賃金の実現など、公平な処遇体系の構築が求められています。
人間関係が悪い
職場の人間関係は、年齢を問わず従業員の定着率に大きな影響を与える要因です。良好なコミュニケーションは生産性の向上にもつながりますが、逆に人間関係の悪化は業務効率の低下を招きます。
特に、不公平な人事評価や部署間の待遇格差、職場環境の整備不足などは、従業員のモチベーション低下や離職の連鎖を引き起こす可能性があります。
一度悪化した職場の雰囲気を改善するには、相当の時間と労力が必要となるため、予防的な取り組みが重要です。
人手不足に有効な5つの対策
人手不足の解消には、単なる採用強化だけでなく、組織全体での包括的なアプローチが必要です。
ここでは、実践的で効果的な5つの対策を紹介します。自社の状況に合わせて、段階的に導入を検討してみましょう。
多様な働き方を認める
従業員のワークライフバランスを支援し、長く働き続けたくなる環境を整備することは、人材確保と定着率向上の両面で効果的です。
具体的には、産休・育休制度の充実、時短勤務の導入、テレワーク制度の整備などがあげられます。
また、長時間労働の改善や休暇取得の促進、諸手当の充実など、福利厚生の刷新も重要です。これらの施策により、現場の士気を高めながら、新たな人材の確保にもつながります。
求人像をアップデートする
「このポジションには○○の経験が必須」といった固定観念が、実は人材確保の障壁となっているかもしれません。
女性やシニア層など、従来の採用基準では見落としていた層にも目を向けることで、優秀な人材との出会いが広がる可能性があります。
スキルや経験にこだわり過ぎず、意欲や適性を重視した採用基準への転換も検討しましょう。
可能なものはマニュアル化する
業務フローの可視化とマニュアル化は、業務の効率化と属人化の防止に大きな効果があります。
手順書や業務マニュアルを整備することで、新人の教育時間を短縮できるだけでなく、既存社員の業務負担も軽減できます。
また、マニュアル作成の過程で業務の無駄や重複が見つかることも多く、業務プロセスの最適化にもつながります。
なお、業務効率化の施策については下記の記事からもヒントが得られるかもしれません。
「業務改善の具体例・アイデア11選！進め方や注意点も解説」
「業務プロセスを改善する5ステップ！有効な施策も紹介」
DXで生産性を高める
デジタルトランスフォーメーション（DX）の推進は、人手不足解消の有効な施策です。
手作業での処理が中心だった業務をデジタル化することで、大幅な効率化が可能です。
クラウドシステムやITツールの導入により、場所や時間に縛られない柔軟な働き方も実現できます。
また、近年は生成AI技術の活用により、さらなる業務効率化の可能性が広がっています。
リスキリング／リカレント教育を推進する
社員の能力開発を支援し、より付加価値の高い業務を担える人材を育成することは、組織全体の生産性向上につながります。従業員にとっても、自己実現やキャリアアップの機会となり、モチベーション向上に寄与します。
継続的な学習機会の提供は、従業員の成長意欲を刺激し、定着率の向上にも効果があります。
特に、新しい技術やスキルの習得を支援することで、組織全体の競争力強化にもつながります。
関連記事：「リスキリング支援に活用できる助成金・補助金一覧！」
人手不足の解消に成功した企業事例
人材不足の解決にはさまざまなアプローチが考えられますが、実際に成功を収めた企業の取り組みから学ぶことは多いでしょう。
ここでは、異なる業種で人材不足を克服した2つの企業事例を紹介します。
業務の見直し・採用の多様化で働きやすい職場に（建設業・不動産業）
ある建設・不動産企業では、従業員の長時間労働が常態化し、新規採用も困難な状況に陥っていました。そこで、抜本的な業務改革に着手したそうです。
まず取り組んだのは、受注基準の見直しです。無理な案件の受注を抑制することで、業務の平準化を図りました。
また、残業や休日出勤を届出制にし、管理の強化にも取り組んだそうです。
そのほか、有給休暇取得奨励日を設定し、休暇を取りやすい環境を整備しました。
これらの取り組みにより、残業時間が大幅に削減され、ワークライフバランスが改善されました。その結果、多様な人材の採用が進み、定着率も向上したそうです。
多能工化、テレワーク導入で働きやすさがアップ（製造業）
製造業のある企業では、社員の多能工化とテレワーク推進を軸とした改革を実施しました。
多能工化により、従業員が複数の業務をこなせるようになり、相互にカバーし合える体制が構築されたそうです。
また、有給休暇制度を充実させたことで、育児・介護との両立支援も強化されました。
さらに、社員間の親睦を深めるためのランチ会を定期的に開催し、職場のコミュニケーション改善に取り組んだことも特徴的です。
これらの施策により、休暇を取得しやすい環境が整い、女性社員の定着率が向上したそうです。
また、社員間の連携が強化されたことで作業ミスも減少し、生産性の向上にもつながりました。
まとめ
人材不足の解決には、業務効率化やDX推進といった業務面の改善だけでなく、働き方改革や人材育成など、組織全体での包括的な取り組みが重要です。
実際に成功を収めた企業では、業務の見直しや多様な働き方の導入により、採用・定着の両面で成果を上げています。
まずは自社の課題を明確にし、優先順位をつけながら対策を実施していきましょう。
