【政府】リスキリング支援に活用できる補助金・助成金
政府が提供するリスキリング支援には、さまざまな補助金や助成金があります。これらの制度を利用することで、企業は従業員のスキル向上や業務に必要な専門知識の習得を支援し、コスト削減を図ることができます。下記では、主な助成金制度について説明します。
厚生労働省|人材開発支援助成金
「人材開発支援助成金」は、企業が従業員に対して、業務に必要な専門的な知識やスキルを習得させるための職業訓練を実施する際に利用できる制度です。企業が従業員に訓練を提供する際の経費や、訓練中に支払う賃金の一部が助成されるため、コストを抑えながら効果的なリスキリングが実現できます。
この助成金制度では、eラーニングや通信制による訓練も対象となっており、従業員が時間や場所にとらわれず学べる環境を整えることができます。また、中小企業向けには助成率が高く設定されているため、特に中小企業の人材育成に適した支援制度です。
助成金は7つのコースに分かれており、企業は目的に合ったコースを選んで申請できます。下記に各コースの概要を説明します。
関連記事:「人材開発支援助成金とは?各コースの詳細や申請の流れも解説」
1.人材育成支援コース
職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練を幅広く助成するコースです。これにより、企業内における人材育成を促進できます。
経費助成率と賃金助成額の上限は下記の通りです。
中小企業 | 大企業 | |
経費助成率 | 60% | 45% |
賃金助成額 | 960円/時間 | 480円/時間 |
※正規社員の場合
※賃金要件などを満たす場合
なお、支給要件などの詳細は厚生労働省の公式ページをご覧ください。
>>厚生労働省「人材開発支援助成金」
2.教育訓練休暇等付与コース
従業員が自己研鑽のために休暇を取得して、業務に必要なスキルを身に付ける研修を受ける際に利用できるコースです。
経費助成率と賃金助成額の上限は下記の通りです。
中小企業 | 大企業 | |
経費助成率 | 36万円 | 36万円 |
賃金助成額 | – | – |
※賃金要件などを満たす場合
なお、支給要件などの詳細は厚生労働省の公式ページをご覧ください。
>>厚生労働省「人材開発支援助成金」
3.人への投資促進コース
このコースは、企業が人材に対して長期的な投資を行い、従業員の能力を高めることで、企業全体の成長を促すことを目的としています。
経費助成率と賃金助成額の上限は下記の通りです。
中小企業 | 大企業 | |
経費助成率 | 75% | 65% |
賃金助成額 | 960円/時間 | 480円/時間 |
※高度デジタル人材訓練の場合
なお、支給要件などの詳細は厚生労働省の公式ページをご覧ください。
>>厚生労働省「人材開発支援助成金」
4.事業展開等リスキリング支援コース
新しい事業展開や業務の変革に対応するために従業員をリスキリングする場合、このコースが適用されます。企業が新たな分野に進出する際に必要となる専門スキルの習得を支援し、事業の拡大に対応できる人材を育成できます。
経費助成率と賃金助成額の上限は下記の通りです。
中小企業 | 大企業 | |
経費助成率 | 75% | 65% |
賃金助成額 | 960円/時間 | 480円/時間 |
なお、支給要件などの詳細は厚生労働省の公式ページをご覧ください。
>>厚生労働省「人材開発支援助成金」
5.建設労働者認定訓練コース
このコースでは、建設業の労働者が技能向上のために指定された実習や研修を受けた場合に支給されます。対象は、中小企業の建設事業者や特定の団体が実施する技能実習で、一定の基準を満たす必要があります。賃金補助や資格取得手当などが提供され、支給には実習の内容・時間・技能レベルが考慮されます。
経費助成率は対象経費の6分の1、賃金助成額の上限は日額3,600円×訓練日数です。
なお、支給要件などの詳細は厚生労働省の公式ページをご覧ください。
>>厚生労働省「建設事業主等に対する助成金 支給要領」
6.建設労働者技能実習コース
このコースでは、中小建設事業主やその団体が建設労働者に対して認定訓練を提供する場合、経費補助、賃金補助、賃金向上助成・資格手当などの支援が行われます。助成を受けるには、特定の条件(例:雇用保険加入や解雇者がいないことなど)を満たす必要があります。
支給限度額は500万円(合計で500万円を超える場合)です。ただし、1人当たりの支給額は企業規模や受講対象者によって異なります。
なお、支給要件などの詳細は厚生労働省の公式ページをご覧ください。
>>厚生労働省「建設事業主等に対する助成金 支給要領」
7.障害者職業能力開発コース
障害者の職業能力を高めるための訓練を提供する事業者または団体向けの助成金です。対象者は身体、知的、精神障害者などで、ハローワークで訓練が必要と認められた従業員も含まれます。支給は訓練施設の設置費や運営費などに対し行われ、条件を満たした教育訓練である必要があります。
訓練科目ごとの施設または設備の設置・整備の場合、支給額の上限は5,000万円です。
支給要件などの詳細は厚生労働省の公式ページをご覧ください。
>>厚生労働省「人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)」
厚生労働省|特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
高年齢者や障害者などの就職が困難な求職者を雇用する企業に対して支給される助成金です。この制度は、ハローワークなどを通じて該当する求職者を雇用した事業主が対象となります。
労働時間や雇用された労働者の分類に応じて助成額が決定されます。支給総額の上限と対象期間は下記の通りです。
中小企業 | 大企業 | |
支給総額 | 240万円 | 100万円 |
対象期間 | 3年間 | 1年6か月 |
※重度障害者などの場合
支給要件などの詳細は厚生労働省の公式ページをご覧ください。
>>厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」
経済産業省|リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業
「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、下記に紹介する4つの活動を提供する事業者に対して、サービス提供にかかる経費を補助するための事業です。
・キャリア相談対応
・リスキリング提供
・転職支援
・フォローアップ
リスキリングにかかる経費の補助は、講座提供額の2分の1相当を定額で受けられます。1人当たり40万円が上限です。
なお、支給要件などの詳細は経済産業省の公式ページをご覧ください。
>>経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業とは?」
【自治体・民間】リスキリング支援に活用できる補助金・助成金
リスキリングを推進する際、自治体や民間団体が提供する助成金や補助金を活用することで、経費の一部をカバーできる場合があります。特に、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やオンラインでのスキルアップを対象とした支援制度が多くあります。下記では、いくつかの支援制度を紹介します。
公益財団|DXリスキリング助成金
公益財団 東京しごと財団が実施している「DXリスキリング助成金」は、企業がDX(デジタル・トランスフォーメーション)に関する職業訓練を実施する場合に経費を助成する制度です。都内に所在する中小企業や個人事業主が対象となり、職業訓練は民間の教育機関などが提供するものが条件です。
この助成金では、職業訓練にかかる経費の4分の3が支給され、1申請企業等当たり100万円が上限となっています。(※令和6年度)
DX関連のスキルを習得させたい場合、この助成金を活用することで費用の負担を軽減できます。
なお、支給要件などの詳細は東京しごと財団の公式ページをご覧ください。
>>公益財団 東京しごと財団「DXリスキリング助成金」
公益財団|オンラインスキルアップ助成金
「オンラインスキルアップ助成金」は、公益財団 東京しごと財団が実施している制度で、企業が従業員に対してeラーニングを利用した職業訓練を行う際の経費を助成するものです。都内に所在する中小企業が対象で、リモートでの学習を支援する形で助成が行われます。
こちらは現在、交付申請の受付を終了しています。
宮城県|宮城県中小企業等デジタル化支援事業
「宮城県中小企業等デジタル化支援事業」は、宮城県内の中小企業や小規模企業を対象とし、生産性向上を目的としたデジタル化の取り組みに対する補助金です。具体的には、デジタル化に伴うアドバイザーの派遣や、ITツール導入などにかかる経費の補助が行われます。
この制度では、経費の最大2分の1が助成され、上限は250万円(グループ企業は500万円)、下限は50万円となっています。(※令和6年度)デジタル化を進める企業にとって、導入コストの負担を大幅に軽減できる支援策です。
なお、支給要件などの詳細は宮城県の公式ページをご覧ください。
>>宮城県「令和6年度宮城県中小企業等デジタル化支援事業」
石川県|金沢市中小企業デジタル人材リスキリング促進助成金
「金沢市中小企業デジタル人材リスキリング促進助成金」は、金沢市内の中小企業に勤務する従業員や役員を対象とした助成金制度です。特定の試験を受験したり、対策講座を受講したりする場合に支給され、試験合格者数に応じて費用が助成されます。
対象となる試験と助成限度額は下記の通りです。(※令和7年度)
対象試験:ITパスポート試験、基本情報技術者試験、応用情報技術者試験
経費区分 | 助成率 | 助成限度額 |
受験手数料 | 50% | 3,000円/人 |
講座受講料(ITパスポート・基本情報技術者試験) | 50% | 10,000円/人 |
講座受講料(応用情報技術者試験) | 50% | 20,000円/人 |
この助成金を活用することで、従業員のITスキル向上を目指し、企業のデジタル人材育成を進めることが可能です。
なお、支給要件などの詳細は石川県産業創出支援機構(ISICO)の公式ページをご覧ください。
>>公益財団法人 ISICO「金沢市中小企業デジタル人材リスキリング促進事業」
富山県|とやま人材リスキリング補助金
「とやま人材リスキリング補助金」は、短期間の教育訓練を対象とした補助金制度で、国の「人材開発支援助成金」の対象とならない教育訓練も支援されます。具体的には、10時間未満の訓練が対象となり、受講料や賃金が補助されます。
経費区分 | 助成率 | 助成限度額 |
受講料 | 75% | 1社当たり100万円/年度 |
賃金助成 | 960円/人/時間 | 1社当たり100万円/年度 |
また、令和6年1月からは、従業員個人の自発的なリスキリングに対する支援や、eラーニング・通信制による訓練も対象に含まれるようになりました。
なお、支給要件などの詳細は富山県の公式ページをご覧ください。
>>富山県「とやま人材リスキリング補助金」のご案内」
広島県|ITパスポート取得支援補助金
広島県が実施している「ITパスポート取得支援補助金」は、県内の企業や団体を対象に、従業員や役員がITパスポート試験を受験する際に、その経費の一部を補助する制度です。
補助限度額は、試験に合格した県内従業員・県内役員1人当たり2万円(大企業の場合は1人当たり1万円)です。(※令和6年度)
なお、支給要件などの詳細は広島県の公式ページをご覧ください。
>>広島県「令和6年度ITパスポート取得支援補助金について」
まとめ
リスキリング支援に活用できる助成金・補助金制度は、企業が従業員のスキルアップを促進する上で非常に有効な手段です。各種制度を上手に活用することで、コストを抑えながらも、企業の競争力向上や成長に寄与する人材育成が実現できます。手続きには手間がかかるため、事前に手順を確認しておきましょう。
なお、当社の生成AI活用術を学べるeラーニング「SkillBridge」なら社労士による助成金申請のサポートを受けられるため、煩雑な手続きを削減しながらリスキリングに取り組むことができます。カリキュラムや費用などの詳細については、下記をご覧ください。