生成AIの導入事例
生成AIは魅力的ではあるものの、「どのように活用すれば良いか分からない」「具体的にどのようなメリットがあるのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。下記では、生成AIの導入事例を3つ紹介します。
問い合わせへの自動回答
カスタマーサービス部門での生成AIの導入は、問い合わせ対応において便利です。実際、AIを搭載したチャットボットを導入する企業が増えています。AIチャットボットは、顧客や従業員からの問い合わせに24時間365日対応でき、質問に即座に回答できる点が魅力です。
また、AIチャットボットを導入することで、「対応の一貫性が確保される」「サポートスタッフの負担が軽減される」といったメリットもあります。
画像や動画などのクリエイティブ制作
生成AIは、画像や動画などのクリエイティブコンテンツを制作する際にも活躍します。例えば、日本の大手ショッピングセンター「パルコ」は、画像生成AIを活用してファッション広告用のビジュアルを生成しました。この広告では、モデル、グラフィック、ムービー、ナレーション、音楽に至るすべてを画像生成AIで作成したそうです。
生成AIが出力する画像や動画は非常にリアルで、独特なモード感があります。ゆえに、ファッション広告にもマッチしやすいといえるでしょう。
出典:株式会社パルコ「「HAPPY HOLIDAYS広告」が、AMDアワードで「優秀賞」を受賞」
新商品の企画・開発期間の短縮
生成AIは、膨大なデータをもとに市場のトレンドや消費者の嗜好を分析し、新商品の企画や開発のプロセスを効率化できます。
例えば、生成AIを活用して新商品のレシピを自動生成し、消費者の好みに合った商品を開発することも可能です。また、生成AIによる需要予測で、市場のニーズに迅速に対応する商品を開発できます。
ときに生成AIは人間が思いつかないようなアイデアを提案してくることもあるため、企画・開発で行き詰まったときにも大きな助けになるでしょう。
生成AIを導入する流れ
コストを無駄にせず、効果的に生成AIを活用するためにも、下記で紹介する導入手順を押さえておきましょう。
導入目的を定める
何のために生成AIを導入するのか、まずは目的を明確にしましょう。「生成AIで達成したいこと」「企業が抱えている課題」などを洗い出して導入目的を検討してみてください。
例えば、「問い合わせ対応の自動化」「クリエイティブ作業の効率化」「新商品開発の加速」など、具体的な目標・目的を設定します。このように導入目的が定まると、どのような機能を備えたシステムが必要なのか明確になるでしょう。
また、導入目的を定めると進捗管理や効果測定もしやすくなります。例えば、「コンテンツ作成にかかる時間を20%減少したい」といったように数値化すれば、実際に運用してどのくらい時間が短縮されたのか評価できます。
生成AIを活用する業務を選定する
生成AIは多機能であり、さまざまな業務に適用できますが、すべての業務に適しているわけではありません。具体的には、学習データに基づく対話や合理的な判断、コンテンツ生成などは得意ですが、オリジナルコンテンツの生成や臨機応変な対応、感情の理解などは苦手です。
そのため、どの業務に生成AIを適用するかを慎重に選定する必要があります。カスタマーサポート、コンテンツ制作、マーケティング、製品開発など、最適な導入範囲を検討しましょう。
AIの運用体制を整える
生成AIは便利な一方、利用リスクもあるため、事前に運用ルールや管理方法を定めておきましょう。特に、セキュリティやコンプライアンスの問題に対して適切な管理体制を整えることが重要です。
例えば、企業の機密情報や顧客データをプロンプト(※)に入力すれば、情報漏洩のリスクがあります。トラブルを予防するためにも、AI利用時の社内向けガイドラインを作成すると良いでしょう。また、トラブルが起きた際の損失を最小限に抑えるために、問題発生時の対応マニュアルを用意するのも有効です。
※プロンプト…AIに指示するための命令文のこと。
導入する生成AIを選定する
生成AIツールはさまざまあり、それぞれ得意・不得意があるため、企業の目標や業務内容に最適なツールを選定することが重要です。例えば、メールや資料の作成を効率化したい場合は、テキスト作成に特化した生成AIが適しています。
選定に際しては、ツールの性能だけでなく、コストや導入後のサポート体制も確認しましょう。自社システムと連携したい場合は、互換性なども考慮することが大切です。
生成AIの運用
ツールを選定した後は、策定した運用ルールや管理方法などの社内ガイドラインに沿って生成AIを運用していきます。生成AIと既存システムを組み合わせる場合、不具合や学習システムに遅れが生じたときは、その都度システムを改善していきましょう。また、運用後は定期的にパフォーマンスを効果測定し、運用方針を見直すことも大切です。
生成AIを導入・運用する際の課題
生成AIの活用は、企業の生産性アップや競争力強化につながる一方で、法的なリスクや問題点などもあります。下記では、生成AIを導入・運用する際に生じる課題を紹介します。
情報漏洩のリスクが懸念される
生成AIに機密情報や個人情報を学習させてしまうと、情報漏洩のリスクがあります。生成AIの提供元にデータが保存されることになるため、悪意のある第三者に流出してしまう可能性があるのです。実際に、OpenAIが提供する生成AI「ChatGPT」で技術的な不具合が生じ、チャット履歴のタイトルが誤って別の利用者に表示されるバグが発生した事例もありました。
実際、社内のセキュリティ基準に満たないことから、生成AIの利用を控える企業もあります。
出典:OpenAI「March 20 ChatGPT outage: Here’s what happened」
権利侵害にあたる可能性がある
生成AIが作成するコンテンツは既存のデータに基づいて生成されるため、著作権や商標権などの知的財産権に関する問題が発生する可能性もゼロではありません。
例えば、生成AIが過去の作品やデザインを学習している場合、その出力物が他のクリエイターや企業の著作物に酷似してしまうことがあります。ゆえに、意図せず権利侵害に抵触するリスクがある点に注意が必要です。
誤った情報を出力するリスクがある
生成AIは、高度な自然言語処理能力を持っていますが、正確な情報を出力するとは限りません。誤った情報を出力することを「ハルシネーション」と呼びます。
誤った情報を活用すると、消費者に誤解を与えたり、企業の信用が損なわれたりする可能性があります。生成AIの出力結果を信頼し過ぎず、情報が正しいかを人の目で確認することが大切です。
社内での利活用が進まない場合がある
コストをかけて生成AIを導入しても、社内で十分に活用されないケースもあります。これは従業員のリテラシーが原因で生じます。具体的には、「AIやデジタルツールに対して苦手意識がある」「生成AIの利便性や可能性が社内で正しく理解されていない」「プロンプト(指示)の書き方が分からない」といったケースです。
また、生成AIが業務内容や企業文化に馴染まない場合も、導入効果を最大限に発揮できません。
生成AIの導入効果を高めるポイント
生成AIの導入には初期投資や運用コストがかかるため、費用対効果を最大化することが大切です。無駄なコストやリソースを削減し、生成AIを効果的に活用するためにも、下記で紹介する2つのポイントを押さえておきましょう。
費用対効果を考慮する
生成AIの導入・運用には、AIシステムの購入費用やシステムのカスタマイズ費用、クラウドサービスの利用料、従業員のトレーニング費用などがかかります。
したがって、生成AIを導入する際には、これらのコストと運用して得られる成果を十分に比較検討することが大切です。生成AIを導入しても、赤字になってしまえば本末転倒です。
業務の効率化、時間の短縮、品質向上など、生成AIの導入によって得られる効果を可能な限り数値化してみてください。導入効果を数値化できれば、予算も決めやすくなります。
AIリテラシー教育を実施する
AIリテラシーとは、AIの基本的な仕組みや活用方法を理解し、使いこなせる力のことです。AIリテラシーが低いと、「期待していた文章が生成できない」「どのように指示を与えたら良いのか分からない」といった事態に陥りかねません。従業員が生成AIを正しく理解し、導入効果を高めるためにも、AIリテラシーに関する教育を実施することが重要です。
AIリテラシー教育は、生成AIの基本的な考え方やプロンプトの基礎をカリキュラムに盛り込みつつ、導入後の業務の在り方についても考える機会を設けるのが効果的です。
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まとめ
生成AIを導入すると、問い合わせの自動回答やコンテンツ作成、企画・開発などで役立てられます。とはいえ、企業の重要な情報が漏洩したり、出力結果が権利侵害に抵触したりするリスクがあるため、運用には注意が必要です。
生成AIを健全かつ効果的に使用するためにも、社内ガイドラインを作成し、AIリテラシー教育を実施すると良いでしょう。