ChatGPTのプロンプト(prompt)とは?
プロンプトは、直訳すると「要求する」「促す」という意味があります。すなわちChatGPTのプロンプトとは、AIに対して何をどのように答えてほしいかを伝える指示文のことです。ChatGPTを含む生成AIでは、プロンプトの内容や構成が回答の質に直接影響します。
プロンプトが曖昧だとAIの出力も不正確になりやすいため、目的に応じて適切なプロンプトを設計することが重要です。また、プロンプトはAIに「人間の意図」を伝える作業ともいえます。AIは言葉そのものを理解しているわけではなく、データに基づいた予測をしているため、曖昧さを排除し、具体的に指示を与えることで期待通りの回答が得られやすくなります。
ChatGPTのプロンプトの基本的な型
ChatGPTに対して指示を出す際には、プロンプトの「型」を活用するとよいでしょう。下記で、プロンプトの基本的な型を3つ紹介します。
深津式プロンプト
深津式プロンプトとは、Note株式会社のCXOである深津貴之氏が考案したフレームワークです。ChatGPTの役割や制約条件を明示し、命令を細分化することで、出力される回答の質を上げる狙いがあります。下記が、深津式プロンプトの型です。
あなたは、〇〇(例:営業職)です。
下記の制約条件と入力文をもとに、最高の結果を出力してください。#制約条件:
文字数や文体などの指定(例:文字数は500文字程度。)#入力文:
依頼内容(例:自社が発売しているトリートメントの商品説明文を記載してください。)#出力文:
ReActプロンプト
ReActプロンプトは、目的を達成するための計画を立てられるプロンプトです。例えば、「TOEICでスコア800に到達したい」「運動神経が良くなりたい」などの目的・目標に対する答えを得られます。
ReActプロンプトは、「行動理由の推論」と「推論に基づいた行動」を組み合わせて、回答の質を高める点が特徴です。出力される結果は、「Thought(思考)」「Action(行動)」「Observation(観察)」の3つの項目に分かれます。下記は、ReActプロンプトの型です。
Thought :
Action :
Observation :
ゴールシークプロンプト
ゴールシークプロンプトは、ゴール達成に必要なプロンプトをChatGPT自身に作成してもらう手法です。望むゴールがはっきりしている場合に適しています。最初の内は求めている答えが返ってこないことがほとんどですが、質問を繰り返しながら軌道を修正し、ゴール達成を目指します。下記は、ゴールシークプロンプトの型です。
あなたはプロンプトエンジニアです。私のニーズに合わせてプロンプトを考えてください。
1.最初に、何についてのプロンプトであるかを私に確認してください。
2.私の入力に対し、プロンプトを作成してください。
3.私が追加情報を提供するので、プロンプトを更新してください。
上記を入力すると、ChatGPTから質問をされます。求める「プロンプト」が得られるまで、質問と回答を繰り返します。
業務で使えるChatGPTのプロンプト例
ChatGPTは、ビジネスメールの作成や競合分析など、業務のさまざまな場面で役立ちます。下記では、実際のビジネスシーンで活用できるプロンプト例を紹介します。
ビジネスメールを作成する
下記は、ChatGPTに「商品に関する打ち合わせ日程の案内」を作成してもらうプロンプトです。
あなたは大企業に勤めるビジネスパーソンです。
下記の制約条件と入力文をもとに、取引先へのメール本文を作成してください。#制約条件:
・文字数は200文字程度。
・自然でわかりやすい文章にする。#入力文:
打ち合わせの日程調整をしてください。
下記の日程を提示したいです。
・9/7 14:00~
・9/10 11:00~
打ち合わせは2時間程度を予定しています。#出力文:
▼出力結果
件名: 打ち合わせの日程調整のお願い
お世話になっております。いつもご協力いただき、ありがとうございます。打ち合わせの日程について、以下の候補日を提案いたします。
・9月7日 14:00~
・9月10日 11:00~
いずれも2時間程度を予定しております。ご都合の良い日程がございましたらご教示いただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
※GPT-4oで出力した結果を引用
To Doリストを作成する
下記は、新規顧客の獲得に必要なTo Doリストを作成してもらうためのプロンプトです。
あなたは、プロの営業職です。
下記の制約条件と事業内容をもとに、新規顧客の獲得に必要なTo Doリストを作成してください。#制約条件:
・タスク別に期限を設ける。
・タスクの内容を50文字程度で簡単に解説する。
・各タスクはテーブル形式で出力する。#入力文:
自社は飲料メーカーで、主力商品は乳酸菌ドリンクです。個人営業での新規顧客の獲得目標は1日3件以上です。目標を達成するために、私はどのようなことをすれば良いでしょうか。#出力文:
▼出力結果
– 期限: 1日目
– ターゲット顧客(地域・年齢層)のリストを作成する。2. ターゲット企業の情報収集
– 期限: 2日目
– ターゲット企業の業態や取引実績など、背景情報を調査する。3. 訪問前資料の準備
– 期限: 3日目
– 商品の特長やプロモーション情報をまとめた資料を用意する。4. 商品サンプルの手配
– 期限: 3日目
– 商談時に活用する乳酸菌ドリンクのサンプルを手配する。
※GPT-4oで出力した一部を引用
SNSの投稿文を作成する
下記は、新商品の紹介をするSNS投稿文を作成してもらうためのプロンプトです。
あなたは、プロのマーケターです。
下記の制約条件と商品情報をもとに、SNSの投稿文を作成してください。#制約条件:
・文字数は150文字程度。
・キャッチーなフレーズを用いること。
・ターゲットは30代の男性。#商品情報:
商品は高級文房具。上質な牛本革を使用しているのが特徴。ビジネスシーンだけでなく、日常的にも使える。#出力文:
▼出力結果
※GPT-4oで出力した結果を引用
プログラムのコードを修正する
下記は、作成したプログラムのコードを修正してもらうためのプロンプトです。
あなたは、Pythonに精通したITエンジニアです。
下記の制約条件と入力文をもとに、プログラムのコードを修正してください。#制約条件:
・改善できる部分を箇条書きで列挙する。#入力文:
現在のコードで修正できる部分を見つけ、修正してください。修正前と修正後の比較をしてください。#コード:
<h1>見出し</h1>#出力文:
▼出力結果
HTML タグが不正です。「<」と「>」ではなく「<」と「>」を使う必要があります。
タグ内の内容も修正が必要です。「<h1>」ではなく「<h1>」とするのが正しい記法です。修正前
<h1>見出し</h1>修正後<h1>見出し</h1>
※GPT-4oで出力した結果を引用
競合分析をする
業界の構造を分析する手法に、「5F(ファイブフォース)分析」があります。5F分析は、業界内の競争に影響を与える要素を5つに分けて分析する手法です。その5つの要素とは、「業界内の競合」「新規参入者の脅威」「代替品の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」です。
下記は、ChatGPTに5F分析してもらうためのプロンプトです。
あなたは、すべての業界に精通した経営者です。
下記の出力フォーマットをもとに、製造業界の5F(ファイブフォース)分析をしてください。#業界:
・製造業#出力フォーマット:
・業界内の競合
・新規参入者の脅威
・代替品の脅威
▼出力結果
製造業界は、多くの競合が存在する激しい市場です。特に規模の大きい企業がシェアを占めているため、中小企業は差別化を図らなければ価格競争に巻き込まれがちです。・新規参入者の脅威
製造業は高い資本投資が必要なため、新規参入のハードルは高いと言えます。しかし、技術の発展やオートメーション化の進展により、特定のニッチ市場や新興技術分野では比較的低コストで参入できる可能性もあります。・代替品の脅威
製造業では、特に材料や製造プロセスの代替が進行しています。例えば、プラスチック製品からバイオマス製品への転換や、3Dプリンティング技術の進化により、従来の製造工程を簡素化する動きも代替の脅威となり得ます。
※GPT-4oで出力した結果の一部を引用
課題解決のアイデア出し
下記は、「飲食店の来店数が増えない」という課題に対するアイデアをもらうためのプロンプトです。
Thought :
Action :
Observation :]
▼出力結果
行動:ターゲット層に響くキャンペーンを実施し、SNSや口コミサイトを活用する。加えて、リピーターが増える特典を導入。
観察:キャンペーン実施後のSNSの反応、来店数、リピーターの動向を確認し、必要に応じて調整。
※GPT-4oで出力した結果の日本語訳を引用
ChatGPTのプロンプトを書くコツ
ChatGPTで適切な回答を得るには、プロンプトを書くコツを把握することが重要です。下記で紹介する4つのコツを押さえておきましょう。
できるだけ具体的に指示する
プロンプトが具体的であるほど、精度の高い回答が得やすくなります。例えば、「目標」「文字数」「参考情報」「出力方法」などを記載すると、その条件に基づいた回答が出力されます。
特定の役割を設定する
ChatGPTに対して「マーケティングの専門家として提案してください」「経験豊富な営業職として回答してください」など、役割を設定すると回答がより専門的になります。
前提条件を指定する
ChatGPTが状況を理解しやすくなるよう、前提条件や背景情報を伝えることも有効です。具体的には、「顧客の年齢・性別」「顧客のリテラシー」「顧客企業の規模」「業界」などです。
例えば、ChatGPTに商品のアイデアを出してもらいたい場合、「商品は美容」「ターゲットは20代女性で美容のトレンドに詳しい」などを入力します。これによって、ターゲット層にマッチしたアイデアが出力されやすくなります。
必要な情報を質問する
一度の質問では、求めている回答を得られない場合があります。その際は、追加の情報を与えることで、ChatGPTが回答を補完してくれます。
不足している情報がわからない場合は、「このデータに不足している情報はありますか?」などと尋ね、ChatGPTに内容を深掘りする手助けをしてもらうのも手です。
まとめ
プロンプトとは、AIに対する指示や質問のことです。ChatGPTを有効活用し、業務効率を向上させるには、プロンプトの精度が重要です。出力したい内容が複雑であるほどプロンプトの設計は困難になるため、ChatGPTを導入する前に研修を実施することも検討しましょう。
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