ChatGPTの情報漏洩の事例
ChatGPTは企業の業務効率化や生産性向上に大きく貢献するツールですが、利用方法を誤ると情報漏洩のリスクをともないます。ここでは、実際に発生した情報漏洩の具体的な事例を3つ取り上げ、その背景や問題点を解説します。
事例1.機密情報が社外へ漏洩
ある企業では、従業員が業務中にChatGPTを使用する際、機密情報を意図せず入力し、それが外部に漏洩した事例がありました。この事例では、ソースコードや技術設計図といった企業の競争優位性に関わる情報、社内会議での議論内容をテキスト化したデータ、顧客情報やプロジェクトの詳細データが含まれていました。
ChatGPTに入力されたデータは、AIの学習や生成の一環として保存される可能性があるため、第三者に情報が流出するリスクが懸念されます。
事例2.チャット履歴のタイトルの流出
ChatGPTのシステムバグが原因で、一部のユーザーが他のユーザーのチャット履歴のタイトルを閲覧できる事象が発生しました。この事例では、チャットの内容そのものではなく、タイトル情報の漏洩です。
しかし、タイトルだけでも「プロジェクト提案書作成」や「機密契約書ドラフト」などの表現から、企業の機密性の高い業務内容を推測される危険性があります。この問題は早急に修正されましたが、企業の信頼性に影響を与えたり、顧客との契約違反に発展するリスクがありました。
事例3.ログイン情報の流出
ChatGPTユーザーのアカウント情報が流出し、不正アクセスに利用された事例も報告されています。この問題では、ユーザーのメールアドレスやパスワードなどの情報がダークウェブ上で売買され、不正アクセスによる被害が発生しました。
不正アクセスを受けた企業では、共有されたチャット履歴の閲覧や、システムへの不正侵入、さらには他のクラウドサービスとの連携機能を悪用されるなど、さまざまな被害が確認されています。特に、パスワードが使い回されていた場合には被害が拡大する傾向があります。
なぜChatGPTの利用で情報漏洩が生じるのか?
次に、ChatGPTの利用によって情報漏洩が起こる原因を2つの観点から解説します。
強化学習をしているから
ChatGPTは強化学習と呼ばれるプロセスを通じて、応答の精度や自然さを向上させています。強化学習とは、AIが「どのような行動が最適か」を試行錯誤しながら学ぶ仕組みで、ユーザーの入力やフィードバックを学習素材として活用する場合があります。
この学習プロセスでは、入力されたデータがAIモデルの改良に役立てられる可能性があるため、ユーザーの入力内容が適切に管理されない場合、意図せずに外部で利用されるリスクが生じます。例えば、機密情報や個人情報が含まれるデータを入力すると、それが学習に使用され、後に他のユーザーの応答として提示される可能性がゼロではありません。
入力したアカウント情報などが提供元に管理されるから
ChatGPTを利用する際、ユーザーが入力するアカウント情報やデータは、提供元で管理されます。この管理されたデータが、外部からの攻撃や漏洩によって第三者に流出する可能性があります。
特に、提供元が保持するデータがハッキングや不正アクセスの対象になると、アカウント情報が抜き取られ、不正利用される事態が発生するリスクがあります。
ChatGPTの情報漏洩への対策6選
ChatGPTを安全に活用するためには、情報漏洩リスクを回避するための適切な対策が必要です。ここでは、企業が実践できる具体的な6つの施策について解説します。
機密情報の入力を控える
ChatGPTの使用時には、機密情報や個人情報の入力を避けることが基本です。どうしても必要な場合には、該当箇所をダミー情報に置き換えるなどの工夫を行うことでリスクを軽減できます。特に、ソースコードや顧客情報など、機密性の高いデータは入力しないよう徹底した運用ルールを整備することが重要です。
チャット履歴を保存しない
業務に関連する会話の履歴をChatGPTに保存しない設定にすることも有効です。「Chat history & training」という機能をオフに設定することで、会話内容がAIモデルの学習に使用されることを防ぐことができます。企業全体でこの設定を統一することで、無意識のうちに情報が保存されるリスクを減らせます。
企業向けのプランを活用する
2023年8月に発表された「ChatGPT Enterprise(エンタープライズ)」は、企業向けに設計されたプランで、情報漏洩リスクを大幅に低減できる仕様となっています。このプランでは、データ暗号化や高度なセキュリティ機能が搭載されており、企業利用に適した環境が提供されています。
API版を利用する
ChatGPTをWeb版ではなくAPI版で利用することで、情報漏洩リスクを低減できます。API版では、ユーザーがプロンプトに入力した情報がAIの学習に使用されないため、機密性の高いデータを安全に取り扱うことが可能です。企業システムに統合して利用する場合にも、API版の採用は有効な選択肢です。
関連記事:「ChatGPTのプロンプトとは?基本の型や業務で使えるプロンプト例を紹介!」
セキュリティシステムを利用する
Microsoft社が提供する「DLP(Data Loss Prevention)」と呼ばれるセキュリティシステムを活用することで、従業員が機密情報をChatGPTに入力するのを未然に防ぐことができます。DLPは、事前に設定した条件に基づいてデータを監視し、不適切なデータ送信を制限する仕組みです。これにより、情報漏洩のリスクを大幅に低減できます。
ChatGPT利用の教育体制を整備する
従業員にAIの安全な利用方法を教育することも欠かせません。ガイドラインを策定し、定期的に社内研修を実施することで、従業員の知識を最新の状態に保つことができます。また、リスク対策だけでなく、実務での活用を促進するためには「SkillBridge」などの研修プログラムを活用することも効果的です。
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まとめ
ChatGPTは、業務効率化や生産性向上に大きく貢献するツールですが、安全に利用するためには情報漏洩リスクへの対応が不可欠です。機密情報の入力を避ける、適切な設定を行う、そして従業員への教育を徹底することで、リスクを最小限に抑えることが可能です。
ChatGPTを導入する際は、これらの対策を講じながら、企業に適した運用体制を整えることを検討しましょう。