9Jul

職場でのAI活用といえば、業務効率化や新サービスへの実装をイメージするだろう。だが、全く違う観点からAIによるオフィス変革を実現することも可能だ。オフィスを作業空間という側面で捉え、徹底してその快適性を追求。結果として、そこで働く人のポテンシャルを最大化するというアプローチだ。
仕事の代替でなく、AIで真の生産性を上げるアプローチ
ビジネスパーソンはなぜオフィスで仕事をするのか。みんなが集まるから、それが仕事だから、仕事道具が揃っているから…。人によって理由は異なるかもしれないが、そこで仕事をする決定な理由を明確に上げられるビジネスパーソンは少ないのではないだろうか。
オフィスが自宅が遠い場合、通勤がストレスになりその時点で生産性は下がる。本当は昼過ぎの方がエンジンがかかるのに定時の9時出社しなければならい。あるいはその逆で早い方が仕事がしやすいのに士業が10時で調子が出ない。本当は昼寝をしたいがひと目が気になってできない。本来、個々のバイオリズムは異なるのに、オフィスでは暗黙の了解で皆に合わせることが常識になっている。その結果、全体としての生産性が下がっているとしても…。
未来のオフィスを創造するプロジェクトが発進
未来のオフィスはどうあるべきか。そうしたテーマに企業の枠を超えて取り組んでいるプロジェクトがある。DAIKIN、OKAMURA、Panasonic、LION、TOTOなどがパートナー企業として参画する協創プラットフォーム「CRESNECT」だ。目指すビジョンは、「創造こそが仕事、となる明日へ」。いままさにオフィスに求められる機能を追求する野心的プロジェクトだ。
全体的なコンセプトは、IoTネットワークインフラで、各社が保有するデータを共有し、新たな価値創出をするというもの。「未来」という言葉あるからではないだろうが、キーテクノロジーとしてAIが有効活用されているのが特徴的だ。
例えばDAIKINは、位置情報と連動した空間制御を行い、個別の空調を実現。加えて好みの香りも設定し、快適さを演出する。これらを個々に紐づけ、AIでデータ解析。個人ごとに最適な温度や香りを学習し、どこに座っても最適の空調や香りが噴射される空間を実現する実験に取り組む。Panasonicは、この証明版、TOAは音で空間のパーソナライズを検証する。
okamuraは、同社のセンシングチェアを活用し、座り姿勢をモニタリング。姿勢やいすの状態を見える化し、座り姿勢のアドバイスにつなげる。Asahiは、バイタルデータを用い、発想が促進される種類提供を目指し、AIを用いたバーカウンターを提供する。こうした実証実験は、新たに開設した会員制コワーキングスペース「point 0 marunouchi」で実際の利用者を対象に行われる。
得られた知見は、年2回のカンファレンスイベント発表され、パートナー企業各社で共有され、実サービスへも活用される。すでに実用レベルにあるような実験もあり、数年内にはどこかのオフィスで導入されているかもしれない。
近未来を描写した映画では、頭に思い描いただけでランプがつき、コーヒーが出され、温度調整がされたり、といったシーンがあった。AIが実装段階に入った今、こうしたこともいよいよ現実のものとして身近になる。ストレスを感じそうになれば、香りや音で心を鎮め、作業効率が落ちてくれば休息を促す。肩こりの予兆が出れば、自動でマッサージ機能が作動する。
RPAやAIが雑務を代替し、オフィス空間ではAIがあらゆる苦痛を取り除き、ヒトの創造性を最大限に発揮させてくれる――。そう遠くない将来、「昔は仕事というものは辛いものだった」と回想する日がやってくる。思わず、そんな期待をしたくなるほど、テクノロジーによる“シゴト快適化”は進んでいる。