24Jun

学習効果が向上すれば、習熟は加速する。問題は、どうやってそれを実現するかだ。より良い教材を開発する、より良い教え方を研究する…アプローチの仕方は様々だろう。とはいえ、本当にレッスンがうまくいっているのかは分からない。ここをクリアできなければ、せっかく教材や指導法を練り上げても、十分な効果は期待しづらいといえるだろう。
授業品質の改善および学習効果向上のボトルネックといえる、レッスン状況が見えないという課題。ここに切り込むべく、AIカメラを活用した取り組みがスタートしている。(株)チャオがオンライン家庭教師「メガスタディ」と共同で行うもので、レッスン中の表情から、習熟度を“可視化”する。
メガスタディオンラインでは、生徒と講師がオンラインで顔を合わせる。この時の映像データをAIカメラで解析。講師と生徒の表情に現れる感情を可視化し、授業中の理解度、集中度合いなどを計測する。
ポイントは、コミュニケーションのメカニズムだ。会話は言葉で交わされるが、実際には非言語によるメッセージがコミュニケーションに活用されており、その割合は9割以上といわれる。つまり、生徒と講師の口頭のやり取りで「理解した」、となっても実際にどうかは分からない。だからこそ、表情の計測は、授業の理解度を解析するには有効といえる。
表情解析にはAmazon Rekognitionの画像解析システムを活用。「DISGUSTED:うんざり」、「HAPPY:幸せ」、「ANGRY:怒り」、「SURPRISED:驚き」、 「SAD:悲しい」、 「CALM:穏やか」、「CONFUSED:混乱」の7つの項目に分類し、全体を約100点として数値化する。表情解析は「動画」でなく「写真」で細かく記録した1秒ごとの写真に対し、6秒間で実施した。

左が生徒、右が講師
両社は「将来的に、AI カメラを活用して表情から生徒の集中力や理解度の数値化を行い、その因果関係や授業の改善に活かしていきたい。集中力が低下したところの重点復習などを行う事で、よりクオリティの高い授業を目指します」としており、AIによる授業のアップデート実現を目指す。
AIというと仕事が奪われる議論もあったようにどちらかといえばネガティブに捉えられがちだが、AIが学びを極限まで改善するとすれば、まさにヒトがよりよく生きることをサポートすることに直結する。AIによる自動翻訳技術は飛躍的に向上しているが、一方でこうした使い方もあることは、人類にとって極めてポジティブなアプローチといえるだろう。