連載:逆説的AI論
Vol.3
大久保圭太(税理士)×境目研究家・安田佳生
5Jun

財務に強い税理士の大久保圭太氏と境目研究家の安田氏の対談3回目は、稼げる税理士によるお金の増やし方へテーマが展開。すごい蓄財術がクールに明かされる中で、AI時代のお金の借り方など、今回も濃密な内容となった。
その3 『ヒトの金で商売をする』
安田 あのー。ちょっと聞きにくいこと、聞いてもいいですか?
大久保 はい、どうぞ。
安田 「借りたら返すな」って本を書かれてますけど、それは踏み倒せって意味ですか?
大久保 真意は「ちゃんと納税して、キャッシュをもって、潰れないようにする」ってことです。
安田 じゃあ、ホントは返したほうがいい?
大久保 いま出口戦略で、MAとか手伝ってるんですけど。
安田 事業売却?M&Aですね?
大久保 そう。そしたらホントに借金返さないんですよ。
安田 借金を返さない?
大久保 今かなり後継者不在ですから、MAの話になることが多いんですよ。そうすると借金ごと譲渡するから、自分では返さない。
安田 確かに。そういうケースもありますよね。
大久保 はい。増えてますね。
安田 それに業績が上がり続けてたら、銀行って「返せ」と言わないですよね。
大久保 言わないですね。むしろどんどん貸したがる。
安田 ですよね。もっと借りてくださいって、言ってくる。
大久保 銀行は、貸すのが仕事なんで。
稼ぐ経営の必勝パターンとは
安田 金利だけ払って、元金は返さずに増やしていくっていうのが、正しい経営じゃないかと思うんですけど。
大久保 その通りだと思います。ヒトの金で商売しないと。
安田 世の中の金持ちの人って、大体ヒトの金で稼いでますよね?
大久保 そうですよ。貯めた金だったら、何年たっても裕福になれないですよ。
安田 何年かかるんだって。
大久保 頑張ってお金貯めても、相続税取られちゃいますから。
安田 ですよね。
大久保 税金対策はすべきですけど、法人はたかだか20-30%ですから。払って金借りて、種銭つくって、それを事業に投下して、回収していく。
安田 それが稼ぐ経営の必勝パターンですよね。
大久保 だって、銀行が長期運転資金を貸してくれるって、この国だけじゃないかなと思う。
安田 そうなんですか?
大久保 運転資金って、普通は短期ですから。5年間の長期運転資金がまかり通って、金利1パー未満で借りれるという。天国ですよ。
安田 やっぱり、まともに事業やろうと思ったら、1億ぐらいのキャッシュは欲しいですよね。
大久保 はい。まとまった資金は絶対必要ですね。
借入ゼロベースで1億円借りる方法
安田 でも節税しながら1億のキャッシュ貯めるって、なかなか無理がありますよ。
大久保 よっぽどの高収益企業じゃないと無理ですね。
安田 ですよね。でも高収益化するにも金がかかります。
大久保 仕組みを作らなくちゃいけないですから。
安田 実際、1億円借り入れしようと思ったら、どれぐらいの利益が必要なんですか?
大久保 借り入れが0ベースですか?
安田 はい。借り入れゼロだとして。
大久保 粉飾せず、健全な利益だったら、1千万円ですね。
安田 1千万円の利益があれば、1億円借りられる?
大久保 一行で1億となると結構重たいですけど。複数行から集めるんだったら、2千万貸してくれる銀行が5行で1億。
安田 じゃあ、まずは健全な利益を1千万申告して、1億のキャッシュを調達する。それが正しい経営ですか?
大久保 そう。まずはキャッシュを持って、選択肢を手に入れる。
安田 確かに。使えるお金が1億あったら、選択肢は激増しますよね。
大久保 僕は、「確変が起きる」って言ってるんですけど。
安田 確変ですか?
大久保 サラリーマンの時って、消費者金融でしか借りれないじゃないですか。
安田 自由に使えるお金ということでは、そうでしょうね。あとは使途が決まってる住宅ローンとか。
大久保 でも創業融資って、例えば「5百万円貯めました」って言ったら、公庫と保証協会から1千万ずつ出るわけですよ。
安田 確かに。
大久保 いきなり2千5百万のキャッシュが持てちゃう。
安田 パッと使いたくなりますね。
大久保 分かります(笑)。でもここでパッと使って赤字にするんじゃなくて、何とか頑張って3期目までプラスに持って行く。
安田 すると、どうなるんですか?
大久保 すると3期目が終わった頃から、プロパーで融資がでる。その段階でもう1回、1千万利益出せば1億ダーって出ちゃう。
安田 じゃあ最短3年で1億のキャッシュが持てる?
大久保 投資家とかファンドとかじゃない、自由に経営ができる資金が1億。
安田 それって、すごいことですよね。25歳で起業した時に教えて欲しかったです。
大久保 ホントそうなんです。でも誰も教えてくれない。
安田 教えてくれる人がいたら、かなり時間を縮められましたね。
大久保 年収5百万だった務めた人が、ポンポンと確変起こして、いきなり億をもてる。
安田 言われてみれば、確変と感じる時期がありましたね。
大久保 キャッシュを掴んだ時でしょ?
安田 まさに。まとまったお金を使い始めてから、確変が起こり始めました。
大久保 そういう世界を体験している経営者は、借りるっていう方法を使うんですよ。
安田 確かに。事業にまとまったお金を使ったことがない人ほど、借金嫌がりますもんね。
大久保 僕は自分でも借入して、オフィスに投資したりしてますけど。実際使った経験がないと、アドバイスできないんですよ。
安田 そりゃそうですよね。逆にそういう人にアドバイスされても、って感じですよね。
AI時代は「借りまくる」のが難しくなる…
大久保 ただ今後はAIも登場するし、今までと同じように「借りまくる」ってのは難しくなるでしょうね。
安田 じゃあ、早く借りたほうがいい?
大久保 それもありますし、しっかり事業をやって、帳簿をちゃんと銀行に開示していくことでしょうね。
安田 帳簿の開示ですか?
大久保 はい。「悪いことしてる」という意味でなく、これからは全部が見られてしまう。
安田 なるほど。じゃあ、そこは顧問税理士さんの出番だと?
大久保 いや、ほとんどの税理士は、顧問先のビジネスモデルを理解してないですから。
安田 そんなので顧問ができちゃうんですか?
大久保 どうやったら利益が出るのかなんて、普通の税理士は答えられないですよ。利益がいくらあるかだって、答えられない税理士はいっぱいいます。
安田 なんと!
大久保 そのくせ交際費が高いとか、高いキャバクラ行きやがってとか、そういうのは見つけるんですよ。税務署の下請け機関で成り立ってるんで。
全4連載「大久保圭太(税理士)×境目研究家・安田佳生」
Vol.1 AI時代に生き残る税理士の考え方とは
Vol.2 AI時代に稼げる税理士はなにをしているのか
Vol.3 AI時代に知っておくべき、お金の処方箋
Vol.4 気鋭の税理士が目指す新しいビジネススタイル
PROFILE

税理士
大久保圭太(おおくぼけいた)
Colorz国際税理士法人代表社員。税理士。早稲田大学卒業後、会計事務所を経て旧中央青山PwCコンサルティング(現みらいコンサルティング)に入社。中堅中小企業から上場企業まで幅広い企業に対する財務アドバイザリー・企業再生業務・M&A業務に従事。2011年に独立し、再生案件にならないような堅実な財務コンサルティングを中心に、代表として累計1000社以上の財務戦略を立案している。著書に「借りたら返すな!」(ダイヤモンド社)など。Podcast「財務アタマを鍛えるラジオ〜マネトレ〜」を配信中。
PROFILE

境目研究家
安田佳生(やすだよしお)
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブ設立。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、境目研究家として活動を続けながら、2014年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。