21May

AIといえば歌手。少なくとも5年前の検索エンジン上の結果はそうだった。そしていま。AIで検索すると「人工知能(AI)とは、人間の知的ふるまいの一部をソフトウェアを用いて人工的に再現したものです。」というSASのAI解説ページが一番上にくる。その横も人工知能についてのウィキペディアの記事、その下もAI関連の記事が並ぶ。
そのさらに下にやっと出てくるのが「AI Official Site」。歌手AI(あい)さんの公式ホームページだ。AI(エーアイ)が仕事を奪うという論調がここ数年続いていたが、これはまさに「エーアイ」が「あい」の居場所を奪う非常事態だ。ただ、ここで泣き寝入りしないのが歌手AI。JR新宿駅西口の北通路にどデカい広告を出し、反撃ののろしを上げた。
「AI(エーアイ)の登場で一番迷惑しているのは、AIです。割とマジで困ってますw」として、「こないだなんとなく『AI』で検索したら、知らいないうちに、人工知能AIサンにAI(ワタクシ)カンペキ負けててw画像検索も全然出てこないしwww これはヤバいなと…AIに職を奪われるのって、私のことか!?ってwだから復帰後は全開ブンブンでw、愛に溢れたMusicをガンガン届けていきますからね。皆さんよろしくお願いしますっ!!」とエーアイに宣戦布告したのだ。
もちろん、ほぼ全文に「w」がついているように本気ではなく、洒落っ気たっぷりだが、検索結果の奪われようは結構な“被害”。一応、「こちらを検索しますか」と控えめにAIさんの検索を促す枠はあるものの、検索結果における場所による開封率の違いは少なくないだけに、職ではないが、ネット上のアピールの場を邪魔されたと考えるのは決して“被害妄想”とは言えない。
もっとも、この広告で宣伝している新曲「Summer Magic」はスマートスピーカー「Amazon Echo」シリーズのCMソング。裏ではちゃっかりと人工知能つながっているのだからAIさんなかなかのやり手かも。それよりも「愛に溢れたMusic」はエーアイには負けない。そんな強い自信があるからこその、AIキャンペーンなのでしょう。思わぬ形の「AI番外戦」ぼっ発でしたが、とりあえずドロー決着のようで――。