25Mar

採用にAIを導入する企業が増加している。人事担当の負担減に加え、バイアスをなくすことで公平な選考を実現するなどがその理由とされる。実際、AI採用で優秀人材を確保した事例も目立ってきている。
拡がるAI採用。転職希望者の本音とは
では、採用される側はこの潮流をどう受け止めているのか。総合転職エージェントの(株)ワークポートが全国300人の転職希望者を対象にアンケート調査を行っている。まず、AI選考の経験者については2.3%。受けたことがないが81.3%だった。企業がAI採用の導入を公開していない場合もあるが、それにしても経験者の割合は少ない印象だ。
その上で、選考のどのプロセスまでならAI採用が適切かも聞いている。過半数を占めたのが「書類選考まで」(56%)。次いで、「面接まで」(5%)となった。その理由として、「書類選考はAIを導入することで公平な審査が行われると思う」(30代・女性・接客販売)といった公平性や効率化を挙げる意見のほか、「人の魅力は対話で判断されるべき」(20代・男性・営業)、「一緒に働く仲間として人物面は実際に会って判断するべき」(40代・男性・管理)と最後は人による判断が適切という声が多数を占めた。
一方で、「最終的な合否の決定まで」が5%、そして「入社後の配属先変更まで」12%、と全面的にAI採用を導入してもいいととれる回答をした転職希望者が計17%いたのは、意外に多い印象だ。この結果からは、どうせAIで選考するならとことんやってくれ、最後に人が絡むなら今までと変わらないだろ、という思いが透けてみえる。加えて、全面肯定派はAIに対する深い認識がある層という見方もできそうだ。
完全否定派の主張
「導入すべきでない」という完全否定派は15.3%で、これも思ったより少ない印象だ。理由については「人生を機械に判断されるのは嫌だ」というもっともな意見の他、「採用する人材の多様性の欠如」や「AIへの信頼度不足」など、AIへの認識の浅さがにじむものが並んだ。それでもAI採用の今後については「増えていくと思う」が82%となり、転職希望者の多くがこの潮流を冷静に受け止めていることが分かる。
人生を左右する採用にAIが大きくかかわるとなると拒絶反応が起こるのは不思議でない。ある意味で人間の自然な反応といえるかもしれない。だが、人間の採用でも思い込みや偏見は避けられず、必ずしも公平な判断が行われるとは限らない。
AI採用に積極的な企業やそれによって優秀人材を確保できている企業は、AIを活用することで「人の可能性を引き出す」と口を揃える。最新テクノロジーの活用で、採用を最善のものにしようという意欲にあふれている。完全に浸透するにはまだ時間がかかりそうだが、採用に限らず、AIが社会に溶け込んでいくには、良くも悪くも常にこうしたプロセスは必要なのかもしれない。