30Jan

グローバル企業が採用し、その優れた成果が報告されるAI面接。ユニリーバは4か月を2週間に、ヒルトンは42日を5日にするなど、AIによる自動スクリーニングは、9割近い期間短縮を実現するなど劇的な効果を発揮し、手間をかけても人間がやるものという採用のイメージを過去のものにしつつある。
グローバル企業がAI採用に全幅の信頼を置く理由
ヒルトンの事例では、書類選考、電話面談、適性検査、一次面接という4つのプロセスを一度のAI選考に集約。それほどまでに、AIによるスクリーニングを信頼している。医療分野では画像認識による診断精度でAIが医師を上回る結果を出すなど、その優れたパフォーマンスが一目置かれているが、ビジネス人材の適性診断となると、容易には全幅の信頼を置けるものではない…。
採用シーンで、AI化の動きが慎重だったのはこうしたことと無関係ではないはずだ。だが、どんな仕組みでAIが面接対象者をスクリーングするのかを知れば、その認識は変わり、少しは納得できるかもしれない。
ユニリーバやヒルトンなどにもデジタル面接プラットフォームを提供するHireVueを日本展開するタレンタ(株)の担当者が解説する。「HireVueにおいてAIは、録画面接の映像データから、話し方や考え方などその人の特徴を抽出し、あらかじめ用意した500人分の教師データと比較。そのシンクロ率を算出します」。簡単にいえば、採用したい資質の人材をAIが録画データから学習し、それに近い特徴の人材をシンクロ率としてアウトプットするわけだ。
表面的には活躍が見込まれる人材の動画データと採用候補の動画をすり合わせるだけだが、その裏では膨大なチェックが行われる。音声データからは喜びや怒りなどの感情の波形データ、テキストからは言葉の間の取り方、感情表現の仕方、映像データからは熱意や集中力…といった具合に特徴を細分化し、ひとつひとつすり合わせていく。その数は、15分の録画データで、約2万5000点といわれ、それらを入力した教師データとの比較から企業文化へのマッチング度や活躍可能性として予測する。
人間の深い知見とシンクロして初めて最適化されるAI採用
もっとも、単に動画を撮影するだけは十分な精度は見込めない。信頼できるレベルにするには、特に動画面接での質問内容が重要といわれ、その開発には産業組織心理学者が加わり、人材要件の分析などと合わせ、入念に作り込んでいく。教師データ500人分というのも精度を上げるには必要な数で、スクリーニングをセミ自動レベルにまで仕上げるには最低半年の期間は要することになる。加えて、ヒルトンの事例では、導入後3年を経てのAI化への大幅シフトであり、劇的な工数削減実現には、相応の準備期間が必然と認識しておく必要はある。
自動スクリーニング機能は、日本版でもオプションとして2018年7月から利用可能になっており、大量採用を行う企業を中心に浸透していくことになるだろう。現実的には、500人の教師データを揃えられる日本企業は少数派であり、限定的な利用に留まる可能性もあるが、カスタムコンサルティングなしで使える職種別プレビルドモデルも2019年内にリリース予定で、そうなれば日本でのAI採用導入が一気に加速する可能性もある。
同社によれば、録画面接へのニーズは日本でもここへきて急速に高まり、20卒では導入企業が100社を超え、利用者は前年の11万人から20万人に大幅に伸長することが見込まれているという。20万人は就活学生の約3割に相当し、日本でもデジタル面接がいよいよスタンダードになる日が近づいているといえる。
「今後は録画面接+AI自動スクリーングに加え、ゲーム型の適性検査の3つをワンセットにしたデジタル面接が主流になっていくのでは」とタレンタでは展望を予測する。様々な分野でAI活用が拡充する中で、採用シーンでもAIが多くの業務を代替し、効率的で高精度なマッチングを実現。社会全体の適材適所に貢献することになっていきそうだ。