中国がAIで日本をリードする理由

中国はなぜAI領域で日本を圧倒できるのか

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連載:逆説的AI論

Vol.3

向井蘭(労働法に強い弁護士)×境目研究家・安田佳生

中国がAIで日本をリードする決定的な理由とは

向井-安田氏

境目研究家の安田佳生氏と労働法に強い弁護士・向井蘭氏の対談3回目は、中国でも仕事をする向井氏の中国事情に話が発展。AIで日本を大きくリードする中国が、なぜそれができるのか。その一端が垣間見える興味深いトピックが盛りだくさんとなった。

労働法の厳しいぜ中国がなぜ、社員をバンバン解雇できるのか

安田 向井さんは半分くらい中国で仕事していらっしゃいますよね。

向井 はい。

安田 中国も日本と同じように労働問題があるんですか?中国は簡単に解雇できるし、金は払わなくてもいい、みたいな感じですか。

向井 いやいや、実は中国の労働法は日本ぐらい厳しい。だけどバンバン首にするんです。

安田 どういうことですか?

向井 要は民族性の問題ですね。

安田 民族性?それで訴えられたり、揉めたりしないんですか。

向井氏-安田

向井 その時はそこから考える。予算とって、クビにして、「あとはお前がまとめとけ」みたいな感じ。

安田 じゃあ、日本法人も中国ではそんな感じですか?

向井 日本法人は、法律があるからといっても民族性でできない。

安田 ちなみに中国社会では、お金を積んでクビにするような会社は、非難されないんですか?

向井 されないです。中国では日常茶飯事なんで。あとはお金の交渉の問題。

なぜ中国はAI領域で日本を引き離せるのか

安田 日本では「AIに仕事を取られる」ってことも問題になってますけど。中国ではどうですか?

向井 AIに関しては、政府と超大手のIT企業だけがすごく頑張って開発してる感じ。それ以外の一般市民はなんのことやらさっぱりわかってない。

安田 じゃあ中国の労働者は、AIに仕事とられる危機感とかは全くない。

向井 ホワイトカラーの人は思ってますね。ただ、まだ予兆がないんで、社会問題にはなってないです。

安田 たとえば医療の分野は、初診の誤診率が6割を超えてて、医者よりAIがやった方がいいんじゃないかと言われてます。

向井 それが実現するとしたら、日本より中国の方が早いでしょうね。

安田 そうですよね。多少の危険があっても「えいや!」でやってしまいそう。

向井氏-安田氏

向井 個人情報も集め放題ですし。レントゲンなんかのデータも大量に集められるので早いと思います。

安田 ですよね。でも国民は反発しないんでしょうか?

向井 中国では、人間を信用してないので。

安田 どういうことですか?

人間よりも機械を信用する国民性

向井 人間よりも機械の方を信用してるんですよ。国も個人同士も。

安田 え!医者も信用してない?

向井 「いい医者がいるよ」というより、「いい機械があるよ」と。機械を自慢する感じです。

安田 信じてる人間は身内だけ、みたいな。

向井 身内とごくと限られた友達だけ。基本的に信用してない。

安田 じゃぁ、会社のために人生かけて働く人とか、いないんですか。

向井 私の知る限り一人も見たことないですね(笑)。

安田 育ててもらった恩義みたいなのはあるでしょ?

向井 それはあります。だけど一生会社に尽くすって人はいない。終身雇用という言葉もない。

安田 「倍の給料払うよ」って言われたら、すぐ転職する?

安田氏

向井 倍どころか1.3倍でも辞めるんじゃないですか。

安田 そのドライ感は、AIがはまりそうなお国柄かもしれませんね。

中国に登場したAI裁判官の“働きぶり”

向井 それでいうと、中国でAI裁判官が登場したんです。試験的に。

安田 AI裁判官ですか!

向井 何の領域だと思いますか?

安田 離婚裁判とか。

向井 それは複雑すぎて難しいでしょう(笑)。刑事です。

安田 刑事裁判ですか?

向井 刑事って実はできるんです。なぜかというとデータベースの世界なんで。

安田 データベースの世界?

向井 量刑って、パターンが決まってるんですよ。殺人でもピストルかナイフかで刑の重さが変わってくるので、AIと相性がいいんです。

安田 なるほど。中国らしいですね。

向井 はい。刑事はほんとにデータがいっぱいあるから。離婚は複雑すぎてAIは難しい。

安田 AIは白黒つけるのが得意ですからね

向井 懲役何年かを決めるのってデータベースなんですよ。データベースから、最後は人間が決める。

安田 日本の銀行融資みたいですね。

向井 そうですね。だけど、それだと「ありがたみ」がないから、最後は人間がやってるんですけど。

安田 でも確かに、刑事裁判なんて人工知能がやったほうが、いいかもしれませんね。そのほうが国民も納得しやすいし。

向井 量刑確定にかかる時間が約半分になったとも言われてます。中国では裁判官の人手不足もありますから、これからもっと拡がっていくんじゃないですかね。

安田 それは、どれぐらいの期間で。

向井氏

向井 もう、すぐそこまで来てます。お医者さんも。

日本の弁護士業界でのAI活用事情

安田 そんなに早いんですか!ちなみに日本の弁護士業界でのAI活用はどうなんですか?

向井 AIの契約書チェックソフトはよくできてますね。一般的な契約書や売買契約書のチェックが瞬時にやれる。

安田 就業規則とか雇用契約とかも、AIで作る日が来ますか?

向井 間違いなく来ます。

安田 労働法の「網の目をくぐるような」雇用契約とか就業規則は、つくれないんですか?

向井 くぐれるようなのつくると、負けちゃうんです。バレちゃうんです。

安田 バレますか。

向井 まじめにやってる方が、むしろ裁判所の受けがいい。

安田 なるほど。

向井 税金をちゃんと払う方がいいのと同じ。残業代を払った方が目を付けられない。

安田 税金を払った方が、資金繰りは楽になりますしね。

向井 残業代も全く同じですよ。

安田 日本の場合、何事もまじめにやった方が上手くいきますよね。

向井 はい。でも中国では通用しないですけどね。そんなに甘くない。(続く)

PROFILE

弁護士

向井蘭(むかいらん)

1975年山形県生まれ。東北大学法学部卒業。2003年に弁護士登録。現在、杜若経営法律事務所所属。経営法曹会議会員。企業法務を専門とし、解雇、雇止め、未払い残業代、団体交渉、労災など、使用者側の労働事件を数多く取り扱う。企業法務担当者向けの労働問題に関するセミナー講師を務める。

PROFILE

安田佳生

境目研究家

安田佳生(やすだよしお)

1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブ設立。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、境目研究家として活動を続けながら、2014年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。

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