7May

AI医療機器ベンチャーのアイリス(株)(本社:東京都千代田区、代表取締役:沖山翔)がさきごろ、塩野義製薬、Beyond Next Ventures2号投資事業有限責任組合を引受先とする、12.5億円の第三者割当増資を行った。すでに実施している臨床研究法に則った臨床試験と並行し、今後は治験や薬事承認に向け、開発を加速していく。
第三者割当増資で12.5億円の資金調達を実施
2017年11月に設立された同社は、「匠の技を医療現場に届ける」をミッションに、人工知能技術を用いた高精度・早期診断対応のインフルエンザ診断支援AI医療機器を開発している。今回の資金調達で、開発中のインフルエンザ診断支援AI医療機器の薬事承認や保険償還の早期実現を目指す。
同社が開発中のインフルエンザ診断支援AI医療機器は、インフルエンザ患者の99%に特徴的にみられる「インフルエンザ濾胞」と呼ばれる腫れ物の観察により、インフルエンザを判定する。濾胞自体は風邪や健康な人にも似たような膨らみがみられるが、インフルエンザの濾胞には特有の特徴があることを日本の医師が突き止めている。この2つ違いを見極めることが、開発における重要なポイントとなる。
もっとも、両者の違いはごくわずか。表面の色調や艶やかさ、大きさや盛り上がり方など様々な特徴が入り混じり、その道何十年のベテラン医師が判別できても、経験の浅い医師では容易には見分けられない。そこで出番となるのがAIだ。同社は匠の医師の眼に代わり、画像解析のアルゴリズムを活用。患者の鼻の奥に綿棒を入れる代わりにのどの写真を撮影して画像解析。インフルエンザ濾胞の画像の特徴を学習させたAIで“診断”することで、発症の早い段階から陰性/陽性を見極める。

予防段階での“匠”は行政も求めている。厚労省資料 “第7回 保健医療分野AI開発加速コンソーシアム” より抜粋
インフルエンザは感染力が強く、早期の対策が必要となるが、発症後24時間以上が経過しないと診断精度が十分に上がらない。加えて、その精度自体も6割程度といわれる。もしも誤判定があれば、その患者の行動によっては、感染が拡大するリスクもある。だからこそ、汎用的で精度の高い診断が可能な医療機器が医療現場で求められている。
医療現場におけるAIは、すでにがんの判定などでも人間の眼を超えたといわれるほどで、着実に進化を遂げている。同社が掲げるミッションのように、匠の技が当たり前のように医療現場に届く未来は、決して遠くはない。AIが、その実現に重要な役割を果たすことは間違いなく、同機器の今後の展開も注目される。