25Jul

<ウチのAIここがウリ>Vol.9
AI活用事例で、人間に代わって商品やサービスをレコメンドする機能はもはやすっかりお馴染だ。きめの細かさや奥深さはデータ量に左右されるが、しっかりと準備が整っていればむしろ、人間以上におもてなしが上手だったりする。
味気ないネットショッピングに楽しさをもたらす期待も
クリーク・アンド・リバー社の子会社であるIdrasys社の「SmartRobot」は、ネットショップ上で“ソムリエ”として活躍しているAIチャットボットだ。現在、その初期モデルがイオンリカー社のWebサイト上で活用されている。
ソムリエというだけに同チャットボットは,ユーザーからの質問形式で合わせる料理や予算、産地などを聞き出しながら、AIで顧客ニーズを解析。5000品目ある中から最適なワインを提案する。Webショッピングは、便利な反面、味気なさがぬぐえないが、そのプロセスにこれを活用することで商品選びに楽しさが生まれ、販促効果も期待されている。
では、気になるソムリエとしての実力はどうなのか。その精度は、販売側の専門家と意見のすり合わせをした上で、自然言語処理とシナリオ型を組み合わせており、柔軟性がある印象だ。購買プロセスにぎこちなさを感じることはなく、やりとりはスムーズでいきなかなか快適だ。チャットボット自体は、台湾メガバンクの8割が採用しており、特に自然言語処理に関しては多くの実績がある。
マーケティングツールとしても大いなる可能性が
同社では、このサービスで販促支援をする一方で、マーケティングツールとしての可能性に今後のビジョンを描く。「問い合わせに対する負荷削減のチャットボットとしての活用はもちろんですが、顧客ニーズを引き出す点においては人間以上も期待できる。そこを追求することでマーケティングツールとして様々な可能性が広がってくる」と同社は展望を明かす。
顧客ニーズの引き出しには直接コミュニケーションがとれる店頭が一番だが、昨今はそれも敬遠されがち。一方、ネットショップでは、購買するだけ終わるのが基本。そこにチャットボットが“御用聞き”として介入することで、一転してマーケティングに有用な情報をごっそり取得することも可能になる。そうしてデータが蓄積されれば、趣味嗜好に合わせたきめ細かい販売予測も可能になり、データ価値はけた外れに向上する。
自社サービスへのAI導入を考える際、表面的にその利便性や効能をみて判断するのはもちろん間違ってはいない。だが、さらにその先を見据えてAI導入を検討すれば、得られる果実は桁が違ってくる。コストや効果の不透明さから導入を躊躇する企業は少なくないが、導入時の視点という意味で、同サービスの“表と裏”という考え方は参考になるだろう。