1Jul

AIがパターン化された業務やビッグデータの解析に長けていることはもはやいうまでもないだろう。逆にいえば、創造的な領域においては、AIが人間に劣る部分もあるということだ。とはいえ、AIによって人間の脳みそを刺激し、その創造領域を“増幅”するという使い方はある。
TISインテックグループのTIS(株)が、(株)博報堂と共同開発した「AIブレストスパーク」は、創造領域にAI技術を応用して企画プロセスの効率化をサポートする発想支援クラウドサービスだ。AIの得意領域を最大限に活用しつつ、人間の脳みそを刺激することで、アイディアを効率的に創出する。
例えば、「ひらめきマップ機能」では、入力したキーワードを共起する関連語を瞬時に表示。市場や生活者に関する情報・ヒントを大量に供給する。データベースから引き出してくるのではなく、一度にネット上のサイトを200P~400Pもクローリング。今流行っている言葉やトピックなどを的確に抽出してくる。この辺りは、人間では困難であり、AIならではの処理能力といえる。
抽出した言語群を切り口や内容によって分類する機能もAIならではといえ、アイディア整理を格段に効率化してくれる。面白いのは、「他人アタマで考える」機能だ。例えば、「ビール」というキーワードを入力したとする。これを「主婦アタマ」や「作詞家アタマ」などでみるとそれぞれ、いかにも主婦や作詞家が考えそうなアイディアや発想を瞬時に示してくれる。
「弊社は現在、構造転換を実現し、社会課題解決をリードする企業を目指している。今回のサービスは、働き方改革で、4割以上が1人でアイディア出しをすることが増えたと実感していることが分かり、その負担を軽減する目的もひとつにあり、博報堂と共同で開発した」とTIS常務執行役員でビジネスイノベーション事業部長上田雅弘氏は説明する。
目指すのはアイディア開発のプロセスを超えるインフラ
開発にあたり、独自の発想支援メソッドを提供した博報堂エグゼクティブクリエイティブディレクターの八幡功一氏は「ここに落とし込んだメソッドは、博報堂のクリエーターが最初に学ぶ発想のABC。鉄則は<拡散と混とんなくして、跳躍なし>。混とんが起きるのは質の前に量。量こそがジャンプを準備する。人間ならせいぜい10~20ページをみるがやっとだが、このサービスでは瞬時に情報空間全体を360度フラットに俯瞰できる。これは人間には絶対にできない」と、そのポテンシャルを絶賛する。
実際、何とはなしに同ツールにキーワードを入力するとその言葉から想像もつかないところへ行き着くことも珍しくない。よくよく調べると、キーワードとの関連がしっかりとあり、それが思わぬ気付きとなり、いい発想につながる。いわゆるブレストでは、複数人でこうしたことを行うことで、「思わぬ気付き」に到達することもあるが、“1人ブレスト”ではなかなか困難といえる。
同ツールは、こうした1人ブレストを強いられているビジネスパーソンの支援も視野に入れており、まさに企画プロセスの効率化をサポートするに足るポテンシャルを備えているといえる。それだけでなく、新規事業の立案や分析作業など、さまざまな使い方がありそうだ。
同社では今後、10月にスマホ版とノウハウ本の発行。来年2020年1月にスマートスピーカー版の発売を予定しており、創造領域におけるAI活用を推進していく。なお、利用料金は、1ユーザーあたり、月額基本料金7,500円(税抜き)。