データを最大限に活用して英語学習をアップデート

人だけでは難しい英語教育の可能性をAIで最大化する

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AIで英語教育のアップデートを目指すレアジョブEdTech Labとは

向氏

人とテクノロジーそれぞれのよさを最大限に引き出し、教育の価値最大化を目指す――。2019年1月にオンライン英会話のレアジョブに発足したレアジョブEdTech Lab(以下EdTech Lab)」。テクノロジーによる英語教育の変革を目指して設立されたEdTech Labが見据える先には、どんな未来が描かれているのか。EdTech Labチーフの向晃弘氏を直撃し、その全貌に迫った。

EdTech Labが目指す「英語教育3.0」とは

――まずはEdTech Lab発足の経緯を教えてください。

向 もともと前身となるR&D室というものがあり、英語教育のアップデートを目指し、実証実験等を行っていました。それを発展させる形で設立されたのがEdTech Labになります。目指しているのは、英語教育の新しいカタチ「英語教育3.0」です。

向氏

――英語教育3.0?

向 これは、我々が創った概念ですが、「英語教育1.0」を読み書き中心や英会話レッスンへのハードルが高い状況とすると、オンライン英会話などでネットを駆使していつでも気軽に英語を話す機会を得られる状況を「英語教育2.0」。ではせっかく得られた学習機会をどれだけ「英語を話せる」に寄与できているのか…。そうした部分を次の課題としながら、より効率的・効果的な英語学習を提案するために、人の力だけではできない点についてテクノロジーの力を活用して、誰もが英語を習得できるようにする教育を確立することを「英語教育3.0」として目指しています。

――具体的にはどんな取り組みになってくるのでしょうか。

向 我々にはこれまでのオンライン英会話学習の提供で蓄積した累計3,500万回以上のレッスンデータ、またそれに付随する多くのデータがあります。これらを有効に活用し、例えば講師と受講者のマッチング精度の向上、習熟度の可視化、受講者のレベルに合わせた教材の提示をすることなどが可能になると考えています。

解説する向

――英語学習で重要になる「教材」、「講師」、「レッスンの中身」、それぞれをデータ解析やAI活用で最大化するということですか。

向 そうです。例えば教材でいえば、本当にその人のレベルにマッチしているのか。その難易度を図るのは現状容易ではありません。そこで言語学を専門にしているEdTech Labのメンバーが、使われている言葉が平坦な英語か、どれくらい文章の深さがあるのか、などその複雑さを人だけではなく、客観的に測る指標を考えています。また今後はレベルが適切でもコンテキストがあっているのか。つまりサッカーが好きなのに野球を薦めてしまっていないかなど、学習をする上でより効果的な教材とは何かを見極めていきます。

データを最大限に活用し、英語学習をアップデート

――データがあればそんなことが可能なんですね。

向 理論上は可能と考えています。

――誰もがストレスフリーに学べる、百人百通りのレッスンを提供する。

向 そこを目指しています。まだ充分に解析しきれていませんが、データを分析し受講者の使用する単語レベルと、教材で使用されている単語レベルをすり合わせ、より最適な教材選びを後押ししたり、講師については声のトーンや使う言葉の癖などから受講者にとって好ましい講師なのかを判断することなどで、受講者の知らない所で学習の妨げになる可能性を下げるという事は可能になります。カリキュラムについても受講者の習熟度とうまく合致しているかなどを、学習データの解析から修正、変更をしていく事で、受講者にとって最適な学習につながることを可能な限り追求していきたいと考えています。

――レッスンに関連するあらゆるデータを活用し、感覚的だった学習を可視化。その上で最大化するイメージでしょうか。

向 習熟というのはとりわけ、感覚的な部分が大きいと思います。例えば、レッスン中に会話が滞っていたり、聞き取れずに質問を繰り返すということはうまくいっていないという可能性があると仮説が立てられます。逆にテンポよくやり取りが進んでいる時はうまくいっていると考えることができるでしょう。そうした習熟に関するであろうデータを蓄積し、解析していくことで、感覚的ではなく科学的に習熟プロセスの改善につなげ、その効果を高めることが可能になると考えています。

――そうしたことは受講者にフィードバックするのですか。

向 はい。そのタイミングは2つあると思っています。ひとつはリアルタイム。レッスンがうまく進んでいる時がそのタイミングでしょう。逆にあまりうまくいっていないときは後からフィードバックする方がいいと思っています。やはり良い事はすぐに知りたいし、悪い事は後から知りたいというのはあると思います。

世界を見据える

――テクノロジーによるレッスンの進化は、究極的には講師がいなくても効果的なレッスンを進めることが可能になるような気もしてきます。その辺りはいかがでしょう。

向 個人的には講師は必要だと思っています。というのは、自分自身でうまくいっていると思っていても、そのことを誰からも言及されないと、不安になる。そういう時に人がエンカレッジすることで習熟が加速する。ですから目指すべきカタチとしては、講師は解析によって得た情報で受講者を誘導し、うまく褒めて、能力を引き延ばす。そういう方向へどんどん向かっていくのが理想的と考えています。

教育をエンタメの域まで昇華させるところまで持っていきたい

――AI等をフル活用しながら、学習におけるあらゆる習熟の阻害要因をそぎ落としていくイメージですね。

向 はい。勉強にはどうしてもモヤモヤが付きまといますが、我々はこのプロジェクトで、教育をある種のエンタメの域にまで昇華させるところまで持っていきたいと考えています。つまり、学びの過程における躓きや挫折につながる要因を出来る限りなくし、楽しみながら学び続けられるようにしたいということです。好きなことをやっている時は夢中になれますし、上達も早い。そういったところを目指しています。そのためにテクノロジーの力を最大限に活用します。その過程には、人間だけの取り組みでは気づかない形もみえてくると期待もしています。

――そうなれば貴社が目指す「日本人1,000万人を英語が話せるようにする」という目標にも大きく近づきますね。

向 英語が話せるようにするとはどういうことなのか。そういうところにまで遡って、なぜ話せないのか、どうすれば話せるようになるのか。そこまで突き詰めながら、打ち手を考え続けています。そのためにも重要になるのはデータ。ですから、蓄積されているデータを掘り起こしつつ、データ取得も並行し、PDCAを回し続けています。(後編へ続く)

PROFILE

レアジョブ EdTech Lab

向 晃弘(むかい あきひろ)

2008年、大阪国際大学卒業後、新卒で面白法人カヤック(株式会社カヤック)にエンジニアとして入社。2012年にディレクターに転身し、幅広いサービスの開発を手掛ける。2015年、株式会社レアジョブに転職。アプリ領域の新規事業におけるUXディレクターを経て、マーケティングなどにも従事。2017年9月より、レアジョブEdTech Labの責任者として、「英語教育3.0」の実現に向け奮闘中。

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