20Jun

<ウチのAIココがウリ> Vol.4
手書きや活字をデジタルカメラなどで読み取り、デジタルの文字コードに変換するOCR(光学的文字認識)市場が拡大している。業務効率化やデジタルトランスフォーメーションの観点からもニーズが増大し、2017年以降はAI技術を活用したOCRも登場。使い勝手や精度が大幅に向上している。
問い合わせ殺到で対応が間に合わないほどの注目度
「毎月数十件の問い合わせがあり、対応が間に合っていない」。こんなうれしい悲鳴を上げるのは、アイリックコーポレーションの広報担当古川満氏だ。保険ショップの『保険クリニック』を運営する同社は、100%子会社のインフォディオが開発したAI-OCR「スマートOCR クラウドサービス」を販売している。働き方改革などの追い風も吹くOCR市場だが、同社のAI-OCRはなぜここまで支持されるのか。
サービス誕生のきっかけは、2004年にまでさかのぼる。同年に開発した独自システムにより、「分析シート」と呼ばれる、保険内容をビジュアルで分かりやすく提示するサービスを提供していたが、保険証券とすり合わせながらの契約情報のシステムを入力する作業は煩雑で、およそ1時間以上顧客を待たせてしまう。そこでOCR技術で保険証券の画像を読み込み、同時に分析シートも作成できることをゴールに設定し、開発が始まった。
ブレイクスルーとなったのは、人工知能だ。保険会社や保険の種類によって書式が異なるフォーマットをディープラーニングを活用することでクリア。処理速度や精度の大幅向上に成功した。それでも、保険証券はコピーを繰り返したり、透かしがあるなどで荒い場合が多く、開発は難航。当初1年の想定が、2年を要する難産の末の誕生となった。
逆にいえば、サービス向上という明確な目標ありきで読み取り精度にも徹底してこだわったことが、AI-OCRとしての高い完成度につながったともいえる。同サービスは、保険証券の読み取りに開発の端を発しているが、2018年9月からは、請求書や発注書、健康診断書など、書式の定まっていない帳票のデータ化にも対応。これも、とことんOCRとしての品質にこだわった同社の姿勢があったからこその展開といえるだろう。
技術ありきでなくサービス向上という必然が生んだ高品質
「技術ありきでなく、サービス向上という必然から生まれたという点が、他のOCRと異なる部分であり、弊社サービスの強みにつながっている」と同社。その言葉通り、OCRとしての読み取りにとどまらず、データ化した情報の活用まで視野入れたフォロー体制も充実しており、そうした部分も多くの引き合いにつながっている要因といえそうだ。
AIのビジネス実装においては、その本質を理解することが重要といわれる。それは、AIができることできないことを認識し、その上で自社サービスの課題にどう組み込むかを考える頭が必要ということだ。必要は発明の母なりというが、同社の事例は現場発でAIをビジネス実装することの重要性を示すいい見本といえそうだ。(続く)