16May

<ウチのAIココがウリ>Vol.1
人間の仕事を奪うというセンセーショナルな存在として一躍注目を集めたAI。その進化は加速度を増しているが、ビジネスの現場に広く浸透するには至っていない。AIの得意/不得意分野の認識が不十分なことに加え、AIで何がしたいのかをイメージできる人材が現場に不足していることなどがその要因だ。本連載では、AI関連サービスを実際に導入する視点から、各種AI製品/サービスのポテンシャルを洞察する。
【シアンス・アール Aldio Enterprise】
頭とはさみは使いよう、はもはや古いが、いまは<頭とAIは使いよう>がしっくりするかもしれない。AI導入で生産性を劇的に向上する。そうしたアバウトな考えでAI導入を検討することは否定しない。だが、本当にそのポテンシャルを活かし、事業を推進するところまで使いこなすには、ビジネス課題の中でどうAIを活用するかを具体的にイメージできなければ、宝の持ち腐れになりかねない…。
スマホIP無線×AIで伝達革命
シアンス・アールのAldio Enterpriseは、AIと組み合わせることでその利用価値が飛躍的に高まるポテンシャルを秘めたサービスとして注目を集め、導入企業を急拡大している。サービスの主軸は、音声でのリアルタイムな情報共有ができるスマホIP無線サービス。アプリを入れることで手軽に始められる、同時に数千名への一斉連絡が行えるなどの利便性が評価され、航空、建設、鉄道、流通店舗などでの導入実績を積み上げている。
例えば、鉄道での利用。事故などの情報共有で同時に多数のコミュニケーションが取れることは、その対処にあたり大きなアドバンテージとなる。音声だけでなく、テキスト化も同時に行え、聞き逃しても確認できるなど、スピードと正確さが求められる現場でのコミュニケーションを一変させるほどの“効果”で、現場変革をサポートしている。
ここにAIが絡むとどうなるのか。例えば飲食店なら「○○様がご来店です」とAldio Enterpriseで話すと、AIが「○○様の最終来店は2月3日です。お気に入りワインは◆◆です」と自動回答する。つまり、来店した瞬間に店員の話した内容をAIが解析し、顧客データを店員に教えてくるのだ。人工知能のアシストで半歩先を行く、上質なおもてなしをさりげなく提供できるというワケだ。
事故現場でも状況をAldio Enterpriseに話すことで類似の事例を瞬時に探し出し、アドバイスを送るようにすることなども可能だろう。要は、現場コミュニケーションのデジタルトランスフォーメーションを推進するのが同サービスの本質といえる。そこにAIを絡めるのはごく自然の流れであり、同社でも今後のAI関連機能の拡充には積極的だ。
同社が目指すのは、人と人が美しくつながる音声プラットフォーム。だが、「美しく」には単なる通話品質にとどまらず、情報量や情報精度なども当然含まれる。つまり、同サービスを単にスマホIP無線による一斉コミュニケーションツールとして考えるのか、そこから生まれる新しいコミュニケーションの始まりと捉えるのか…。AIありきのサービスでないからこそ、そのポテンシャルを最大化するには導入後のAIリテラシーが問われることになる。(続く)