連載:AI脳の創り方
Vol.6
ビジネスパーソンのための戦略的AI活用のキモ
23Apr

一般的に新規にAIを導入するためには最低でも半年程度の期間と数千万程度の費用がかかると言われています。当然ながら、なかなかそんな予算や時間はとれないのでトライアルのような形でのスモールスタートから始めようとする。それが実際には多いのではないでしょうか。
データを入れてみるまで課題が分からない問題
まずはAIを使ってみて課題を潰しながら本格的な導入に向けて具体化をしていく――プロジェクトの進め方としては非常に妥当なやり方に見えます。なにしろAI導入にあたって、見えない部分があまりにも多いわけですから。
ですが、実際のAI導入プロジェクトにおいてはスモールスタートだったはずの最初のステップで躓いてしまい、そのままプロジェクト全体が頓挫してしまうことが少なくありません。小さく始めているのに失敗するとなると、本当に厄介としかいえません。AI導入を躊躇する企業が増えるとしても仕方がない。そんな風にも思えるかもしれません。なぜ、こんなことになるのでしょうか。それには様々な理由が考えられます。
AI導入がうまくいかないいくつかの理由
原因のひとつにはAIならではの、実際にデータを入れてみるまでは何が問題になるのかがわからない、という性質があります。通常のプロジェクトなら、事前にある程度、過去の事例や実験データなどから、見通しが立てられるものです。ところが、AIはやってみないとみえてこない…。ここが通常とAIプロジェクトの大きな違いです。
スモールスタートであれ、そうでなくても、AI導入プロジェクトの初期に用意されるのは、必要最低限のありもののデータであるのが通常です。その場合、その量や品質に課題があることは少なくありません。その結果、当初はAIで期待された精度が出ないことも珍しくありません。
AIのモデルを作ってみることでデータ自体の精度に問題があることや、データのラベル付け方法に問題があることが初めてわかることはよくある話です。動き始めてから課題が鮮明になる――通常のプロジェクトではこうしたことはむしろ例外的ではないでしょうか。それが当たり前のように起こるーー。AI導入プロジェクトが一筋縄でいかないことが、その進捗にマイナスに作用していることは間違いないといえるでしょう。
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PROFILE

株式会社 TMJ 営業統括本部 マーケティング推進本部 サービス推進部 Data Science推進室
小泉 敬寛(こいずみ たかひろ)
2008年より京都大学 工学研究科 助教としてウェアラブルメディア、コミュニケーションに関する研究を行う。2016年より株式会社TMJに入社。現職では統計処理や機械学習などの新技術に関する調査、研究・開発を担当。AIをはじめとする新規技術を使ったサービスやソリューションの提案やコンサルティングに取り組んでいる。