連載:AI脳の創り方
Vol.3
ビジネスパーソンのための戦略的AI活用のキモ
12Mar

関係者への修正依頼のようなチェック作業があります。やったことがある人であれば想像がつくかも知れませんが、量だけで言えば問題のある文章というのは全体の概ね数パーセント程度しかないものです。とはいえ、この数パーセントは実際に読んで見なければ発見できません。言ってしまえば、業務の大半は文章を読んで問題がないことを確認することに費やされているわけです。
現状はAIとの分業制が効率を最大化する
文章を読ませ、それが問題のある文章なのかそうでないのかを判定させる。それだけなら『AI』でも十分に任せられそうです。データ的にも「問題がない」文章であれば大量にあるので『AI』に学習させやすくなります。そうして「問題がない」文章を『AI』で選別し、粗方取り除いてから、残ったものをこれまで通り人がチェックする。そうすれば、単純に見るべき量を減らせるので今までと同じ業務をしながら、これまでの倍の量を捌いていくことが可能になります。
実際にある企業からデータを預かり、トライアルをしてみると、【問題なし】とされる文章のうち半分程度は99.9%間違いなく『AI』が判定できました。残りはこれまで通り人間が見ることになりますが、作業量は元の半分になっているので本来必要な問題のある文章への修正依頼などの業務へ割く時間を多く確保できました。
このように、うまく『AI』が得意な業務領域を見つけ、人のやる作業と分担させてやる。多くのAI導入においては、こうしたアナログな“前処理”が必要になってきます。『パレートの法則』とは少し違いますが、この例の様に文章を読むという大量の単純作業があり、その中に人がやる必要のある、少数だが複雑な作業が混ざっている業務は少なくないのではないでしょうか。
AIを使いこなす前にやるべきこと
業務の中身をよく観察し、『AI』が活用できる領域を探す。場合によってはつくり出す。それが、『AI』を導入する際にポイントとなる考え方です。なんとかしてAIをビジネスに活用しようという姿勢は否定しませんが、その前にやることがあるのです。
期待値はかなり大きいようですが、今はまだ『AI』と呼ばれている技術は、小さな仕事を多少肩代わりしてくれるものでしかありません。ですから、その活用領域は人間が見つけて切り出してやる必要があるのです。
『AI』が人の仕事を奪うという論調も多く見られましたが、基本的には人間が主体とならなければ『AI』自身では何もできないのが実状です。ですから、AIという新技術をビジネスで活用するためにはまず、それを扱えるスキルを磨く必要があるのです。かつてPCが職場に入ってきた時、ビジネスパーソンはPCスキルを必死で身につけました。それと同じことをいま、求められているのです。
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PROFILE

株式会社 TMJ 営業統括本部 マーケティング推進本部 サービス推進部 Data Science推進室
小泉 敬寛(こいずみ たかひろ)
2008年より京都大学 工学研究科 助教としてウェアラブルメディア、コミュニケーションに関する研究を行う。2016年より株式会社TMJに入社。現職では統計処理や機械学習などの新技術に関する調査、研究・開発を担当。AIをはじめとする新規技術を使ったサービスやソリューションの提案やコンサルティングに取り組んでいる。