1Mar

日本マイクロソフト(株)(本社:東京都港区、代表取締役社長:平野 拓也)は、マイクロソフトとIDC Asia/Pacificが共同で実施したAIに関する調査「Future Ready Business: AIによるビジネスの可能性について」(AIによるアジア太平洋地域のビジネスの可能性について)の結果を公開。そこから見えてきたのはビジネスにおけるAIへの期待感であり、導入ハードルの高さだ。
AI導入の理想と現実
AI時代といわれ、昨今はAIのビジネス実装も珍しくなくなりつつある。実際に同調査でも調査対象の約4分の3が、自社の競争力強化にとってAIが重要であると述べている。ところが、実際にAIに関する取り組みを開始した日本企業はわずか33%に留まっている。
阻害要因となっているのはなにか。調査ではAI導入の課題として、「スキル、リソース、継続的な学習プログラムの欠如」が29%でトップに挙がり、以下「アクションにつながる洞察を得るための高度な分析/十分なインフラストラクチャーとツールの欠如」、「組織のサイロ化と抵抗的な組織文化」と続いている。
AI人材の不足が深刻化する中、育成するにも体制の構築が困難なことが浮き彫りになった結果といえるだろう。加えて、AI導入を推進するにも抵抗勢力が強力という背景も透けてみえる。AIに対する誤解や認識不足がまだまだ根強い印象だが、これではさすがに危機的といえるだろう。
そうした中で、AIの採用理由トップ5は1位:競争力の強化(22%)、2位:イノベーションの加速(18%)、3位:従業員の生産性向上(18%)、4位:顧客エンゲージメントの向上(14%)、5位:利益率の向上(14%)となっている。もはや導入しないことがリスクでしかないような結果といえる。
調査したIDC Japanの眞鍋 敬氏(ソフトウェア&セキュリティ/ITスペンディング グループディレクター)は、次のように解説する。
「現在、企業はAIを導入することによって、11~14%のビジネス改善を期待しています。さらに3年後には少なくとも2.1倍の向上を期待しており、AI導入によるビジネス改善の効果はイノベーションの加速、利益率の向上、従業員の生産性向上の分野で最も高い向上が期待できると予測しています」。
では、どうすれば、導入に立ちはだかる壁を突破できるのか。眞鍋氏が続ける。「企業のリーダーは、AIを自社のコア戦略とし、組織文化を育成する必要があります。AIは短期に効果を感じられなくても、長期的視点から継続的な投資を行っていくべきです。さらに、AI活用のための開発、展開、管理のための人材育成、および適切なガバナンスを備えた堅牢なデータインフラストラクチャの構築が喫緊に求められます」。対症療法では到底追い付かず、抜本改革を伴う大胆なアクションが、AI導入には必須ということだろう。
時代はAI。そんな風潮に、無策のままにわかAI担当を設置するなど、その場しのぎようなアクションを起こす企業も少なくない。だが、それは担当者レベルの自己満足でしかなく、なんの前進もしていないことを認識しておいた方がいいのかもしれない。デジタルトランスフォーメーションの文脈からも、AI導入を単なるツールレベルで考えていては路頭に迷うだけだ。