連載:Q&AI
Vol.4
AIベンチャー社長がズバリ指南。失敗しないAI活用の勘どころ
21Feb

AIベンチャー社長中村氏が、悩める担当者にズバリ回答するビジネス相談室。
Q:会社へのメール問い合わせをAI対応に切り替えたい
Q:基本的には問題ない認識だが、クレームの場合、どの程度まで自動対応が可能なのか。できれば完全自動化が希望だが、その場合、どんなデータが必要になるのか。
A:チャットに切り替えることが最も近道
A:どうしてもメールの必要があるなら別ですが、問い合わせをAI対応にしたいなら、チャットに切り替えることが最も近道です。
理由は3つ。ひとつは、チャットは連続的にやり取りするので、課題を絞り込みやすい。すでに多くの対応サービスが開発されている。3つ目はどうしても自動対応できない場合、スムーズに人間に切り替えられる。
もしもメールの場合、いきなりサービスの不満をつらつらと書かれていたとしても、それに対応した返信には繊細さが求められ、自動対応では限界があります。自然言語処理などでクレームメールであることを判断するのは難しくありませんが、対応を間違えれば命取りになるのがクレーム対応。だからこそ、応答を続けながら、クライアントの本音に迫れるチャットの方がAIとの親和性は高いといえます。
完全自動化については、現実的には難しいでしょう。なぜなら、チャットでの対応では完結したとしても、クライアントの気持ちが収まるとは限らないからです。この辺りはより直接的なコールセンター向けサービスで最新技術が活用されています。例えば、音声を文字変換し、その内容を解析。瞬時に回答候補をオペレーターのパソコン画面に表示することで、的確な対応をサポートすることが可能になっていたります。
チャットボットの場合、最終局面で人に切り替え、同様の文字解析から適正な回答を表示させ、対応することで極めて効率的にクレーム対応を実現することは可能でしょう。簡単な質問はもちろん、クレームの対応は骨の折れる作業です。これらを限りなく自動化することは、業務効率化にとっては大きな前進になります。
一方でこうした顧客との接点は製品やサービスの改善および新製品開発のヒントが詰まった重要な局面でもあります。AIに質問やクレームの質および種類などを分析させ、フィードバックすることでこれまでは考えつかなかったようなアイディアを発掘できる可能性は十分にあるでしょう。その意味では、問い合わせ対応のAI化は、データ収集の観点からもいち早く取り組むべきかもしれません。
PROFILE

株式会社サイシード
中村陽二(なかむらようじ)
東京大学工学部、同大学院工学系研究科修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーでM&A、成長戦略の構築に携わった後、株式会社サイシード創業。100社以上の業務効率化、ツール導入に携わった実績を持つ。HP:https://www.sciseed.jp/