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連載:AI脳の創り方

Vol.1

ビジネスパーソンのための戦略的AI活用のキモ

AIのビジネス実装が難しい本当の理由

AIのビジネス実装が難しい本当の理由

いまや様々なサービスで『AI(人工知能)』の活用が謳われています。では『AI』とは何ができるものなのでしょうか。『AI』という言葉は、計算機に知的作業を行わせるアルゴリズムやその研究分野自体を表していて、特定の機能を示すものではありません。ところが、ニュースなどで報じられる『AI』はDeepLearning(ディープラーニング)をはじめとする機械学習アルゴリズムを指していることが多いのが実状です。

まだまだ多いAI認識の誤解

機械学習とは、人間と同じ様に経験ベースで学習をして判断するための基準やルールを計算機に覚えさせる機能のことをいいます。DeepLearningと呼ばれるアルゴリズムの登場で膨大なデータを効率よく学習し、場合によっては人間以上に正確な判断をさせることも可能になりました。つまり、データを使って人間と同様の判断をさせるアルゴリズムを作ってやることができるわけです。

これだけを聞くと、AIはデータさえ用意してやれば人間に代わって何でもできるようなものを作れそうですが、当然そうはいきません。技術的な課題も色々とあるのですが、なによりもまず、肝心のデータがなかなか用意できないのです。

AIの特長として、「自動的にデータを学習して~」と書かれることがあります。実際には自動的に学習するのはあくまでもデータを処理するためのパラメータであってデータ自体ではありません。つまり、自動的に学習できるような性質の良いデータ、言い換えれば判断に必要な情報が含まれたデータを用意しておかなければなりません。

なぜ使えないデータが多いのか

しかし、蓄えられたデータの中にはそもそも必要な情報が揃っていない事が多いのが実状です。その理由は、これまでデータというのは最終的に人間が解釈することを前提に集めることがほとんどだったからです。ですから、人間が見てすぐに不要だとわかるようなデータは無駄なものとして捨てられてしまっています。

前述のようにAIはデータがあれば、これまで人間に任せるしかなかったような業務でも自動化や効率化ができる可能性がある有用な技術です。その点では大きな可能性を秘める優れた技術といえます。逆にいえば、データやそこに含まれる情報そのものについて、より深い理解が求められるということでもあります。そうした業務で使う知識、特に明文化されにくいものはたいていの場合、現場が一番良く理解しているものです。

だからこそ、実際にAIを導入するときの一番のポイントは、現場をどれだけ巻き込みながら導入を進められるのかという点になるのです。遮二無二なって使える『AI』を見つけるよりも、技術と現場、双方を知り、潤滑油となって動ける人を見つける。それがAIをビジネス実装するにおいてキモになるのですが、同時になによりも難しい課題なのです。

AI脳の創り方「ビジネスパーソンのための戦略的AI活用のキモ」
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PROFILE

小泉 敬寛

株式会社 TMJ 営業統括本部 マーケティング推進本部 サービス推進部 Data Science推進室

小泉 敬寛(こいずみ たかひろ)

2008年より京都大学 工学研究科 助教としてウェアラブルメディア、コミュニケーションに関する研究を行う。2016年より株式会社TMJに入社。現職では統計処理や機械学習などの新技術に関する調査、研究・開発を担当。AIをはじめとする新規技術を使ったサービスやソリューションの提案やコンサルティングに取り組んでいる。

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