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連載:Q&AI

Vol.1

AIベンチャー社長がズバリ指南。失敗しないAI活用の勘どころ

資金力がないがAI活用で盛り返したい

資金力がないがAI活用で盛り返したい

AIベンチャー社長の中村氏が、AIビジネスを検討するビジネスパーソンの疑問や質問に回答するQ&A企画。今回は、人手不足に悩む中小企業経営者から寄せられた切実な声にズバリ回答します。

Q:AIで人手不足を補完したい

「求人を出しても人が集まりません。人手不足をAI等のテクノロジーを活用して補完したいと考えています。業種は製造業ですが小さな町工場です。どういったところから手を付けていけばスムーズにシフトできるのか教えてください」。

A:匠の技をデータ化し“工場管理者”へのシフト目指せ

どういった業務内容かによりますが、例えば職人依存型で優れた技術があるなら、考えるべきはテクノロジーを活用しての職人の“工場管理者”へのシフトです。どういうことか。簡単にいえば、職人技といわれるスキルを可能な限り分解し、数値化、データ化するのです。そのデータをAIで学習させ、職人依存から機械化による量産型にするのです。

職人の頭の中にあるものをデータ化するのは簡単ではないと思います。感覚的なものを可視化するわけですから、何度も試行錯誤することになるでしょう。しかし、データ化することは伝統の技を後世へ伝える貴重な資料にもなります。なにより、これまでは年間100個しかできなかったものが例えば1万個製造できるようになるとすれば、経営は安定し、新たな雇用創出も可能になります。

入手困難なほど大人気の旭酒造の純米大吟醸、獺祭。山口県の山間部の酒蔵でつくられているのですが、そののどかな雰囲気とは裏腹に製造現場ではITが駆使されています。従ってそこに杜氏の姿はないんです。代わって、杜氏の頭の中にしかなかった秘伝の技を、製品を検査して抽出、データ化。結果的に杜氏が作るものよりうまい酒を造ることに成功したんです。しかも、製造量は他の酒蔵の最大で100倍ともいわれています。

獺祭は純米大吟醸ですが、他の製品でももちろん応用は可能でしょう。職人が情報をオープンにして、データによって匠の技を量産する。そうなれば、高い付加価値の製品をリーズナブルな価格で消費者に提供できる。まさに革新によって、瀕死の状態から脱することも夢でなくなります。もちろんマーケティングも重要ですが、企業の存続を決めるのはあくまで市場。その市場に対し、競争力のある製品をつくることは、大きなアドバンテージとなるハズです。

小さな町工場でもつくりだす製品に高い付加価値があるなら、AIやテクノロジーを駆使して職人の“工場管理者”へのシフトを試みてください。もしも、製品にオリジナリティがなく、技術にも独自性がないなら、状況は相当厳しいと考えてください。市場が縮小フェーズにある中で、消費者にも求職者にも訴求できないわけですから、遅かれ早かれ大きな波に飲み込まれるのは明白だからです。

AI時代は、個人でもその力を最大化しやすい環境が整っています。たとえ一個人でも圧倒的な独自性があれば、それを大きな市場に乗せることも決して不可能ではありません。逆にいうと、なんの強みも持っていなければ、そうした“個性”にいとも簡単に押しつぶされやすい状況ともいえます。そのことをしっかりと念頭に置いていてください。

PROFILE

中村陽二

株式会社サイシード

中村陽二(なかむらようじ)

東京大学工学部、同大学院工学系研究科修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーでM&A、成長戦略の構築に携わった後、株式会社サイシード創業。100社以上の業務効率化、ツール導入に携わった実績を持つ。HP:https://www.sciseed.jp/

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