10Jan

世界経済フォーラムの最新の研究によると、数年以内に機械の仕事量が人間の仕事量を上回るそうだ。目安は2025年で、それまでに7500万の仕事が消失。一方で1億3300万の新しい仕事が生み出されると展望する。この研究リポートが提示するものはなにか。ズバリ、スキル再訓練による労働力のトランスフォーメーションだ。
2025年までに消失する仕事は7500万だが…
ロボットやAIの台頭は、「職を奪う」というネガティブな論争に発展しがちだ。だが、当然ながら、仕事消滅の一方で新たな仕事が誕生もする。つまり、仕事がその形を変え、新しく生まれ変わるということだ。同研究では、仕事の消失数を新たな仕事の創出数が圧倒しており、いわゆるAI脅威論が杞憂であることを証明している。
問題は、新たな仕事には、適応するための訓練が必要になるということだ。これをおっくうと考えるなら、その将来に暗い影が待ち受けていることを覚悟する必要がある。同研究によると、リスキリング(スキルアップ)が必要な労働者は54%。実に半数以上が再訓練を求められる。同時に企業側が正規労働力の削減を予測する割合は50%となっており、「学び直し」を拒絶することが職を失うことに直結する可能性が高い現実が浮き彫りになっている。
変態くなくして安泰なし
その意味ではロボットやAIの台頭は脅威ではないが、ビジネスパーソンは変態の必要があり、現状維持では先が安泰とは言えないということになる。当然、個人レベルの話では収まらない。企業が時代に合わせた新たな事業を始動するなら、それに対応できる人材が必要になる。即戦力は外部から引き込むしかない。当然、それでは限界がある。そうなれば、所属社員を教育で戦力化することが不可欠となる。
安定を求め、会社員を選択しているビジネスパーソンにとって、その対極といえる変態はとてつもなく気が重いことかもしれない。例えば、AI時代に需要が大きいのはデータアナリストや科学者、ソフトウェア開発者などのテクノロジー系だ。一方で、削減対象となりやいすいのは、データ入力事務、経理・支払い事務などのルーティン系のホワイトカラーとなっている。だからといって、データ入力事務員が、教育によっていきなりデータアナリストになるにはさすがに無理がある。
企業がやみくもにこうした人材を望むだけでは、AIはまさに仕事を奪う脅威となる。それ以前にそれでは健全な経営といえず、早晩破綻することは目に見えている。経営サイドは、可能な限り自社の強みを生かした変態を実現する。その上で、社員により多くの選択肢を用意する。社員は新たに創出される仕事から自分ならできる、興味があるものを見極め、変態する。このプロセスが不十分だと、企業は内部崩壊し、時代に取り残されることになるだろう。
第四次産業革命の最中で、企業も労働者も大きな変革を迫られている。産業構造そのものの変化というのは、この半世紀では初体験となる一大転換。その本質は、人類がより豊かになる分岐点ということだ。徒にAI脅威論に踊らされるのではなく、どうすればこのビッグチャンスに適合できるのか。そうした視点で、トランスフォームに向き合えば、職場の生産性は劇的に向上し、同時により幸福度が増大するハズだ。